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第63章 中学生の本分は性交に非ず

梨果の初めの出演はピアノソロでプログラムの三番目だった。皆と同じく制服姿で登場し客席に礼をしてピアノ椅子に座る。

(緊張しているな。)

ショパンの“幻想即興曲” 以前家で弾いていた記憶がある。暗譜で弾く。

概ね上手く弾けていたが、少しリズムが走りミスタッチがあった。場内の拍手はまばらだった。

次の登場は休憩を挟んでから、奏音とペアでのアンサンブルの伴奏だった。

モンティの“チャルダッシュ”　これは奏音が家に来て何度も練習していた。
最初のゆっくりな部分と後半の速い部分の対比が面白い曲だ。
今度は楽譜を見ながら伴奏する。
イントロは梨果のピアノからだ。
そして奏音のヴァイオリンがメロディーを奏でる。

(うーん、素晴らしいヴァイオリン……)

滑らかな序盤の曲調でヴァイオリンのボディが良く鳴っている。
隣の友也を見ると自分の彼女の美しい姿に見とれていた。
長身でスタイル抜群な奏音。ヴァイオリンを奏でる姿で一段と魅力的に見えた。

さて、後半のリズムの速いパートに来た。梨果のピアノがスリリングに変調する。それに乗っかるようにヴァイオリンの激く刻むメロディーが走る。

大勢の拍手が送られた。華々しい笑顔を奏音は客席に見せていた。特に男子学生は色めき立っていた。友也も鼻が高かろう。
しかし梨果の表情は曇り気味だった。