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第79章 地獄からの離脱

「もしもし。」

『酒井です。突然で申し訳ないのですが理由あって恵比寿のマンションのカードキーを返却していただきたく連絡しました。』

「えっ？はぁ、わかりました。」

『申し訳ありませんが近々にお時間いただくことは可能でしょうか。』

「……急ですが今日で良ければこの仕事が終わり次第お届けに伺えますが。」

酒井さんと落ち合う場所と時間を確認して通話を終えた。

あのマンションのカードキーを返してくれとはどういうことだろう。もしかしてやっと地獄の輪廻から解き放たれるのかな？なんて、そんなはずないか……


「お疲れ様でしたー」

「美幸ちゃん！今日も良かったよー！」

監督さんに誉められた。


ドラマの現場を離れてマネージャーの松尾さんと電車に乗る。

「来週の日曜午後は予定入れられる？」

「ごめんなさい、日曜午後はまた駄目かもです。」

きっと河海社長の呼び出しがあるから。

「学生の撮影は土日がメインだから毎週だと厳しいのよね。彼氏か何か？なーんてね、そういうことは聞いちゃダメよね。」

マネージャーの松尾さんは本当に良くしてくれている。毎週のように河海社長に呼び出されるのでスケジュール調整に無理を言っちゃってる。

「松尾さん、今日知人と会うので次の駅で降ります。お疲れ様でした。また明日よろしくお願いします。」

「もう有名人なんだから人に悟られないようにね、あと行動は慎重にー」

「はーい。」