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第79章 地獄からの離脱

「これカードキーです。」

地獄の扉を開くカードを渡す。

「確かに受け取ったわ。あのマンションも引き上げ。それが私の最後の仕事。」

「もう二度と行きたくないです。」

「そうね……そしてこれ。」

酒井さんはバッグから数本のビデオテープを取り出した。

「足利くんから。流出とかコピーとかは一切してないって。」

「あ……」

社長による私への陵辱の全てが録画されているテープだと思われる。

「彼はあなたに好意を抱いているみたいだから信じていいかも。」

「足利さんが……」

「そもそもそれが流出したら足利くんもただじゃすまないけどね。」

「……彼は罪に問われるのですか？」

「彼はお咎め無しよ。これからも女優を続けるならまた会うこともあるかもね。」

「よかった……」

「貴女はもう自由よ。女優のお仕事頑張って、陰ながら応援しているわ。」

「ありがとうございます。」

「私はまだまだアイツを許さないけどね……」

「はい？何かおっしゃいました？」

「……ううん、何でもない。独り言よ。」


酒井さんと別れた。
携帯電話を取り出して連絡する。

「もしもし松尾さん？日曜日全日スケジュール開けられました！はい！バリバリ頑張ります！！」


帰宅すると父が店先に立っていた。

「ただいま、お父さん！」

「おかえり、美幸。お？いつになく元気そうだな！今日の撮影上手くいったかい？！」

「当ったり前じゃん！せっかく叶えた夢だもの！」

明日は鬼塚製薬のスポーツドリンクのCM撮影だ。頑張らなくちゃ！