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なりすました姦辱
第2章 制裁されたシングルマザー
 父はインド生まれインド育ちだが、真璃沙は日本生まれの日本育ち、国籍も日本を選択し、母の戸籍に入っている。母は、昔の写真を見せてもらった際、「こりゃ相当モテただろうな」と素直に思えた人で、真璃沙も、その素養を十二分に受け継いでいた。

 そしてまた、親子ならば当たり前なのだが、母だけではなく父からの影響も多分に受けていた。高めではあっても群を抜いた背丈ではないのに、頭の小さい父の遺伝子が等身を稼いでくれている。かの国の歴史的背景による目鼻口のくっきりとした顔立ちも、日本的美人の母の顔立ちと絶妙にミックスされており、おかげで真璃沙は学生時代、日本における「カースト」の最上位にずっといることができた。

 数少ない難点と思っているのが、父から受け継いだ肌が、小麦色として出てしまっていること。あともう一つ、母もそうだし、父も潜在的に保有していなかったらしく、バストが望むほどには成長しなかったことだ。

 高校で友達のTikTokに映り込んだら、彼女たちを差し置いて、「#激カワハーフJK」「#スタイル抜群ギャル」などと拡散し、自分でも始めてみると、フォロワーがみるみると増えた。Instagramにも進出したら更に伸び、学校という狭いコミュニティだけではなく、一般社会でも通用する外見的優位性を自覚できる、充分な数字を得ることになった。

 なので漠然とではあったが、将来はこの恵まれた容姿を活かした仕事をしたい、と思うようになった。

 母は、発信者としての真璃沙の活動を、好意的に見てくれていた。
 問題は父だった。

 娘の育ってきた環境での価値観と、父が育った国の、特に日本より断然色濃く影響する宗教的倫理とのギャップ……なのではなかった。単に、「娘が自分を売り物にしているのが気に入らない」という、なんだか日本の古風な父親っぽい理由で快く思っていなかった。

 高三になって、投稿を目に止めたモデル・プロダクションが声をかけてきたとき、望みが叶って小躍りするも、父には言わなかった。プロダクション側もまだ本物の原石かどうかを見極めるつもりだったのだろう、雑誌の小特集に街角モデルとして出てみないか、と誘ってきた。おそらく、誘っていると見せかけての、テストだったにちがいない。
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