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なりすました姦辱
第2章 制裁されたシングルマザー
 自前の服で2カットのみ、読者モデル扱いすなわち無報酬、SNS名も記載なしで、名前もイニシャルだけ、という条件で掲載されたが、どうやら反響は上々だったらしく、別の号にも出て欲しいという出版社の要望が伝えられた。するとプロダクションとしても、よその事務所に掠め獲られる前に、と、「専属」を前提に真璃沙の獲得へ本腰を入れ始めた。

 とりあえず、家には内緒で登録モデルとして出版社の要望には応えたが、専属になるには契約書にサインすることになり、未成年では親の承諾が必要だった。専属と登録とでは、仕事の量と質がまるで異なってくる。となると、卒業後は大学に進学すると思っている父親に話さざるを得ない。女子大生モデルも結構だが、そもそも勉強は嫌いだし、全入時代だから名前を書けば受かる大学もあるけれども、下手な大学名だとモデルのしての肩書にはむしろ邪魔になる。専属・専業モデルが真璃沙が望むところだった。

 厳しい世界だということはわかっているつもりだが、小麦色の肌は他のモデルとの差別化にもなるし、主張乏しめバストも、この職業には必ずしも不利ではない。難点だと思ってきたことがプラスに働き得るのだ。判で押したようなカワイさではない、特徴のある整った顔立ちも大いなる武器になると思うので、やっていける可能性はあるし、やっていくつもりだった。

 意を決して両親に話すと、母は賛成したが、案の定、父は大反対だった。

 冷静に建設的な議論ができればよいのだが、父娘間の諍いは立場が対等ではないため、理屈よりも感情が先行しがちである。真璃沙の家でも例に漏れず、モデルという職業とは何か、あるいはそもそも仕事というものはどういうものなのかなどは話し合われず、興奮してお互いの気持ちの表明ばかりが行われる平行線に終わった。以降、何度も話し合いに持ち込むが、エリート層出身で弁の立つ父親を説き伏せるには至らない。

 そうなると、真璃沙の性格もあって、完全に意固地になった。
 何のことはない、18歳、つまり成人になればいいのだ。

 そうして真璃沙は、プロダクションに3月の誕生日まで待ってもらい、晴れて契約を結んだ。もちろん大学受験はスルー。父親とは、もう全くと言っていいほど口をきいていない。

(あーあ、早くお金、貯まんないかなー)
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