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なりすました姦辱
第1章 脅迫されたOL

「……まあ、その、なんだ。医者の言うことをよく聞いて、一日でも早く治すことだな」
小田のほうも会話に困っているのか、この体の主のことを慮ったというよりは、何となく職務だから仕方がないというような、職場に復帰させたいなど真剣には考えていないことが見え見えの言いぶりだった。
「……わかりました」
「これからも月に一度くらいは連絡したいがいいか?」
「はい……」
「じゃ、また来月くらいに」
電話を切るつもりのようだ。
保彦は慌てて、
「あ、ちょっ……」
「ん?」
「えっと、あの……」
一番訊きたいことは、僕は武藤保彦ですが、私、は誰なのでしょう、何故ここにいるのでしょう、ということだった。
さすがに、メンタルを患っている上にそんなことを言ったら、驚かれるだけでは済まされない。
「気になるのか、君が休み始めてからのこと」
「はあ……、えっと、気になるというか……、何て言ったらいいか……」
「須賀は君に対する、『指導』かな、少し厳しすぎた、と反省しているよ。俺からもよく話をしておいた」
言い淀んでいると、また勝手に会話を繋いでくれ、とにかく電話を切らせぬことには成功した。
「そ、そうなんですか」
「ただ……、まあ、医者でもない素人が言っちゃいけないんだろうけどね、須賀の気持ちも分かってやってくれ。何せ昇格して初めてのプロジェクトだ。はるかに歳上のメンバーに対して、距離感がつかめてなかったんだろう」
カラン、カチ、カチという音が聞こえた。保彦も煙草を吸うので、灰皿とライターの音だとわかった。どうやら喫煙所に入ったらしい。
「年下に感情的に扱われちゃ、病んじまうっていうのもわかるんだけどね、言ってしまえば、今回の件は、ちょっとした行き違いなんだ」
部門員を管理監督すべき自分自身に、言い聞かせているようにも聞こえた。
小田の話しぶりは、明らかに須賀とかいう奴の肩を持っているように思えた。何か人間関係のいざこざがあったのだろう、須賀は組織長の注意程度で済み、自分は休職した、というわけだ。何にせよ、大学の教養科目で少し習ったかぎりの知識をもってしても、メンタルヘルスを損なった者に対する小田の対応は、最悪だと思った。
(ま、この見た目だしなぁ)
文字通りの他人事だった。
同情すべき謂れは何一つ無い。
小田のほうも会話に困っているのか、この体の主のことを慮ったというよりは、何となく職務だから仕方がないというような、職場に復帰させたいなど真剣には考えていないことが見え見えの言いぶりだった。
「……わかりました」
「これからも月に一度くらいは連絡したいがいいか?」
「はい……」
「じゃ、また来月くらいに」
電話を切るつもりのようだ。
保彦は慌てて、
「あ、ちょっ……」
「ん?」
「えっと、あの……」
一番訊きたいことは、僕は武藤保彦ですが、私、は誰なのでしょう、何故ここにいるのでしょう、ということだった。
さすがに、メンタルを患っている上にそんなことを言ったら、驚かれるだけでは済まされない。
「気になるのか、君が休み始めてからのこと」
「はあ……、えっと、気になるというか……、何て言ったらいいか……」
「須賀は君に対する、『指導』かな、少し厳しすぎた、と反省しているよ。俺からもよく話をしておいた」
言い淀んでいると、また勝手に会話を繋いでくれ、とにかく電話を切らせぬことには成功した。
「そ、そうなんですか」
「ただ……、まあ、医者でもない素人が言っちゃいけないんだろうけどね、須賀の気持ちも分かってやってくれ。何せ昇格して初めてのプロジェクトだ。はるかに歳上のメンバーに対して、距離感がつかめてなかったんだろう」
カラン、カチ、カチという音が聞こえた。保彦も煙草を吸うので、灰皿とライターの音だとわかった。どうやら喫煙所に入ったらしい。
「年下に感情的に扱われちゃ、病んじまうっていうのもわかるんだけどね、言ってしまえば、今回の件は、ちょっとした行き違いなんだ」
部門員を管理監督すべき自分自身に、言い聞かせているようにも聞こえた。
小田の話しぶりは、明らかに須賀とかいう奴の肩を持っているように思えた。何か人間関係のいざこざがあったのだろう、須賀は組織長の注意程度で済み、自分は休職した、というわけだ。何にせよ、大学の教養科目で少し習ったかぎりの知識をもってしても、メンタルヘルスを損なった者に対する小田の対応は、最悪だと思った。
(ま、この見た目だしなぁ)
文字通りの他人事だった。
同情すべき謂れは何一つ無い。

