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なりすました姦辱
第3章 報復されたハーフモデル
「なんで痴漢されたほうが連れて行かれなきゃなんないの?」
「いえ、こういった迷惑行為があった場合は、双方からお話をお聞きしなければいけない規則でして」
「痴漢はとっとと警察に突き出しゃいいじゃん!」
「そうもいかなくてですね、きちんとお話を聞いてからでないと。警察のかたも、迷惑行為の被害者であるお客様には、お話を聞いてくるかと……」
「は? てか、アタシ、そんな時間ないんだけど」

 ギャルは、せっかく職員が気を使ってマイルドな言い方をしてくれているのに、こうむった行為の名を堂々と言い放って憤然となっている。

「あの……」
 そこへ、別の声が話しかけてきた。「その方は、違いますよ」

 四人で一斉にそちらを見ると、そこには一人の男が立っていた。

 季節にはまだ早い半袖のポロシャツに、時代遅れのデニムとスニーカーを履き、セカンドバッグを携えている。ガタイが良く、袖から除く腕っぷしはなかなかだが、距離があってもわかるくらいの剛毛を帯びていて、ゴリラ風味を強く漂わせた男だった。

「……先生」

 ギャルが驚く。

「おお、ニャムか。制服じゃないから、わからなかったぞ」
「どういうことですか?」

 知り合いのようだったが、早くホームから移動したい警備員が訊きたいのはそこではなく、その前の発言を質すと、

「私、同じ車両に乗ってました。降りようとしたら、ドアが開いてすぐにゴチャつきましてねぇ、押し合いへし合いで、そばの人の足を踏んでしまったんですよね。すみませんって謝ったのは、間違いなく、この方でした」

 ゴリラ男は土橋を手で示した。

 足を踏まれた気もするが、定かではない。スニーカーだから大して痛くはなかったろうし、謝られたことも耳に残っていない。仮に、この男の勘違いだとしても、どうやら自分を救けようと買って出てくれているようだから、保彦が何も言わずにいると、

「まあ、ニャムは……いやこの子は、こんな髪で目立ちますから、人が多い後ろ姿でもわかります。私たちと、この子の間には何人もの人がいましたし、かなり離れてましたから、どうしたって届きませんよ」
「だって……、絶対、触られたし」

 筋の通ったゴリラ男の証言に、ギャルは反駁するが、威勢はだいぶん削がれていた。
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