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なりすました姦辱
第3章 報復されたハーフモデル
「ああ、お前が嘘をついている、とは言わない。……あの、私、やったところを目撃したわけではないんで、あんまり変なことは言えないんですが……、なんかこう、若くて茶髪の、学生風の男ですかね、そいつはこの子のもっと近くにいたんですが、私たちと同じ方向に歩いてたのに、この子が走って追いかけてって、この方を捕まえたのを見たら急にUターンして……、逆の階段のほうへ、かなりの早歩きで行ってしまったんですよ。もしかしたら……まぁ、私の想像の域は出ませんが」
「……うるせーよ、ブサ野……」

 当人には聞こえていないようだが、ギャルの吐き捨てた呟きは保彦には聞こえた。レザーリュックを提げた腕の肘を逆側の手で持ち、真っ直ぐな髪を前に垂らし、スキニー映えする脚をクロスさせて、ミュールで床を叩く自分の足を見つめている。ゴリラ男の証言に、警備員たちは顔を見合わせ、どうするべきか目で会話をしていた。ゴリラ男はギャルと知り合いのようだが、被害者ではなく容疑者のほうの肩を持っているところが、より信憑性を増させているようだ。

「ニャム、お前仕事、頑張ってるようだなぁ」
「……はあ」
「卒業生が有名人になったら、後輩も先生もみんな嬉しがるぞ」
「えっと……」

 下を向いたまま体を左右に揺らし、もはやとても当事者と思えない態度に変わっていたギャルは、やがて、苛立たしげに大きな息を肩でつき、バッグからスマホを出して時刻を確認した。

「……先生、あと任せました。仕事あるんで行きます」

 頼む相手の目を見ずに早口に言ったかと思うと、回れ右をして歩み始める。

「おい、この方に謝りなさ──」
「あ、ちょっと、お客様──」
「もういいって!!」

 ゴリラ男と警備員の引き止めも背中だけで突っぱね、派手な髪を揺らして去っていってしまった。

(やれやれ……)

 保彦は溜息をついた。
 見た目のイメージをはるかに上回るヒドいギャルだったが、とにかく、この救世主ゴリラのおかげで、冤罪が立証されたようだ。

「あの、とりあえず、駅務室に行きましょうか」

 なのに警備員にそう言われ、

「なんでですか。もういいでしょ!」

 と、思わず大きな声を出してしまった。
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