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なりすました姦辱
第3章 報復されたハーフモデル

「あの子は日本人ですか? なんか、変な名前で呼んでましたが」
「インドとのハーフです。戸籍名は北原真璃沙というんですが、学校では父方の苗字も名乗らせろ、というのが彼女の父親の意向でしてね、親子で国籍が違うとはいえ、父親には自国の苗字への誇りがあるんでしょう、学校では、北原・スブラマニアム・真璃沙、として扱っていました」
「スブラ……マニアム……?」
「一回聞いて復唱できるなんて、耳がいいんですね。あっちのほうではそう珍しくない苗字だそうなのですが、友達連中は皆、最後の『ニアム』だけを取って『ニャム』って呼んでましたよ。TikTokだかInstagramだかで、学校だけでなくネットでもかなり有名だったみたいなんですが、まぁ確かに、あの恵まれたルックスですからねぇ。なので、卒業後はモデル事務所に入ったようです」
草野は訊いてもいないことまで話したが、保彦はあのギャル──真璃沙の、ミドルネームが最も引っ掛かった。偶然の一致だろうか。草野も珍しい苗字ではないと言っている。
「しかし在学中から、大人に対してもあんな態度でしてね。あまり教師の言うことを聞く子ではありませんでした。まあだいたい、最近の高校生なんて、教師の言うことなんか全然聞かないですが」
「まあ……、ちょっと……、あれは、ね」
「あの子が社会人としてやっていけるのか、心配ですよ」
言うことを聞いてもらえないのは教師だからというわけではなく、ブサ野だからではないか、とは言わなかったが、真璃沙の人物評については同意見、いや自分は教育者でも何でもないのだから、もっと酷評を下したかった。生意気というか、自己中というか、見た目の良さで周囲に持て囃されるのを当然と考えているのが滲み出たような、若気の一言では済まされない振舞い。きっと今ごろ、自分落ち度は一切責めず、まんまと逃亡を果たした痴漢犯か、あるいは最悪、冴えなく醜いサラリーマンの紛らわしさを責めているのではないだろうか。せっかく早くに家を出たのに、そんな奴のせいで、大きなタイムロスをしてしまったのだ。
「土橋さんにも、大変失礼なことをしました」
「インドとのハーフです。戸籍名は北原真璃沙というんですが、学校では父方の苗字も名乗らせろ、というのが彼女の父親の意向でしてね、親子で国籍が違うとはいえ、父親には自国の苗字への誇りがあるんでしょう、学校では、北原・スブラマニアム・真璃沙、として扱っていました」
「スブラ……マニアム……?」
「一回聞いて復唱できるなんて、耳がいいんですね。あっちのほうではそう珍しくない苗字だそうなのですが、友達連中は皆、最後の『ニアム』だけを取って『ニャム』って呼んでましたよ。TikTokだかInstagramだかで、学校だけでなくネットでもかなり有名だったみたいなんですが、まぁ確かに、あの恵まれたルックスですからねぇ。なので、卒業後はモデル事務所に入ったようです」
草野は訊いてもいないことまで話したが、保彦はあのギャル──真璃沙の、ミドルネームが最も引っ掛かった。偶然の一致だろうか。草野も珍しい苗字ではないと言っている。
「しかし在学中から、大人に対してもあんな態度でしてね。あまり教師の言うことを聞く子ではありませんでした。まあだいたい、最近の高校生なんて、教師の言うことなんか全然聞かないですが」
「まあ……、ちょっと……、あれは、ね」
「あの子が社会人としてやっていけるのか、心配ですよ」
言うことを聞いてもらえないのは教師だからというわけではなく、ブサ野だからではないか、とは言わなかったが、真璃沙の人物評については同意見、いや自分は教育者でも何でもないのだから、もっと酷評を下したかった。生意気というか、自己中というか、見た目の良さで周囲に持て囃されるのを当然と考えているのが滲み出たような、若気の一言では済まされない振舞い。きっと今ごろ、自分落ち度は一切責めず、まんまと逃亡を果たした痴漢犯か、あるいは最悪、冴えなく醜いサラリーマンの紛らわしさを責めているのではないだろうか。せっかく早くに家を出たのに、そんな奴のせいで、大きなタイムロスをしてしまったのだ。
「土橋さんにも、大変失礼なことをしました」

