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なりすました姦辱
第3章 報復されたハーフモデル
 正面から見据えられて、耳に美声が流れ込んでくると、長身の女の人の自分以上の憤慨が伝わってきた。そう、そもそもレッスンを受けているのは、他でもない、モデルとしての自分を高めるためなのだ。その体を、汚い手で触られた。この女の人の言う通り、見逃していいわけがない。

「行ったら、時間、どれくらいかかる?」
「そうね、午前中くらいかしら」
「わかった。行くし」
「……ありがとう」

 まるでドラマの中の超優しい母親のように、長身の女の人は両の手のひらを真璃沙の頬に当て、ゆっくりとした瞬きをして礼を述べてくれた。

「それじゃ、あなたのお名前と、事務所の電話番号教えてくれる?」
 そう訊かれ、素直にどちらも教えると、「──恐れ入ります、わたくし、警視庁鉄道警察隊の古宮と申します。実は先ほど、御社に所属されている北原さんが……」

 さっそく、その場で事務所に電話を入れてくれる。その姿は凛々しく、とても頼もしい。

「……事務所の方、怒ってなんかいらっしゃらなかったわ。とても心配されてた」
 穏やかに言った長身の女の人──古宮さんは、若い女の人のほうを向き、「それじゃ広瀬さん、行きましょう」

 その女の人──広瀬さんを促して先に行かせ、後ろを真璃沙を連れて歩き始めた。

 テレビでよくやっている警察密着ナントカで、『痴漢捜査・逮捕の瞬間』みたいなのがあるが、もっと大人数でやっていた。やっぱりアレはテレビ向けで、現実では二人とかなのだ。しかも女性だけ。

(もしかして、女二人で組んでるってことは、オトリ捜査とかやんのかな。……てか、こんなキレイな人たちだったら、ほぼハニトラじゃん)

 レッスンに遅れることも古宮さんがカタをつけてくれて、騒ぎも引き起こさないでくれたために、真璃沙にも心の余裕が生まれ、女性警察官たちの様子を観察することができた。

 隣を歩く古宮さんは、自分の母親よりも少し年下くらいだろうか。母も美人だが、どちらかと言うと可愛いほう、古宮さんはいかにも大人っぽく、そして色っぽい、とても綺麗な人だった。顔だけではない。背も高く、脚も長い。しかし生意気言うと、モデルには向かない。向かないくらいの「ナイスバディ」というやつで、横から見るとバストの膨らみっぷりが反則だ。
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