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なりすました姦辱
第3章 報復されたハーフモデル
 配偶者の有無を訊いてみたいと思ったとき、いつしか地下鉄の駅を出て、街の中にある小さなコインパーキングまでやってきていた。痴漢男は所在なさげに視線を地面に落とし、まるで抜け殻のように立っている。そんなにヘコむなら最初っから触んなよ、と真璃沙が心の中で唾を吐きかけていると、広瀬さんが停まっていた黒塗りのバンのスライドドアを開け、顎で指し示して痴漢男を中に乗せた。白黒のパトカーではない。だが、テレビのニュースとかで、使われているのを見たような気もする。

 広瀬さんは何も言わず、ドアの傍らに立って、真璃沙と古宮さんにも乗車するよう手招きした。

「……乗りましょう」

 古宮さんが先に行ったが、広瀬さんの反対側に立って、真璃沙が乗るのを待っている。

 さすがにたじろいだ。中には痴漢男が乗っている。そこに乗り込むということは、そいつの隣に着座するということだ。なおかつ、ベンチシートである。二人の警察官がいる前で変なことはしないと思うが、遮るものが何もないというのは怖すぎた。

「あの、助手席に……」
「ごめん、助手席には乗せちゃいけない決まりになってるんだ」
「じゃ、後ろとか」
「そこも。積んでるものあるから」

 車体に凭れて腕組みしている広瀬さんに、突慳貪に断られた。やはり、この人と仲良くするのは難しいっぽい、と判断した真璃沙は、古宮さんのほうへ、

「んっと、もう、気分は大丈夫なんだけど……、さすがに、アイツの隣とかは、キツくて」

 と、正直に意向を告げた。

 すると古宮さんはしばし考え、広瀬さんに目配せしたあと、

「……わかった。じゃ、私が真ん中に乗るわ。そうしましょう」

 と言って、先に乗り込んでくれた。

 ほっとして最後に乗り込むと、広瀬さんがドアを閉め、回り込んで運転席に座り、車を発進させる。大きなバンは徐行で細い街路を抜け、やがて幹線道路に出るとスピードを上げた。
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