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なりすました姦辱
第3章 報復されたハーフモデル
 外装はありふれた車だったが、中は天井に太い金属パイプが渡っているほか、いくつかのよくわからない器具が据え付けられていた。やはり、警察車両は普通とは違うんだなと深く考えず納得し、それにしてもこんなに大きな車なのに、広瀬さんが悠々と運転をしていることのほうに感心させられた。隣では、古宮さんがまっすぐ前を向いている。歩いていたときのような朗らかさはなく、真剣な顔つきである。隣に犯罪者が乗っているのだから、気を張っているのも当然だった。

 しかし、そんな緊張が馬鹿らしくなるほど、古宮さんの向こうの痴漢男は歩いている時からと変わらずに項垂れていた。どんな顔をしているのかよく見えないが、惨めな姿を見ていると、ざまあみろ、とウキウキしてしまう。

 背をシートに押し付けられた。
 車が、坂を上り始めたのだった。

 電子音が聞こえてくる。
 ETCだ。高速道路に入ったらしい。

「……道が混んでるかもしれないから、高速を使うの」

 古宮さんが前を向いたまま、真璃沙が尋ねる前に静かに答えた。少し、その声は震えていたが、古宮さんがそう言うのなら、と、真璃沙はそれ以上は訊かなかった。

「古宮さん」

 すると運転席から、広瀬さんが古宮さんを呼んだ。

「えっ……、ええ、何?」
「手錠、しなくていいんですか? 罪を認めたんですから」
「……ええ、……そうね」

 古宮さんが足元へ手を伸ばす。身柄拘束のシーンはドラマなどではよくあるが、もちろん真璃沙は生で見るのは初めてだった。野次馬根性を出したら注意されるかもしれないが、少しくらいなら、と、手錠をかけられる瞬間の顔を拝むため、古宮さんの体で見えづらいので少し体を前に倒し、首を伸ばして覗き込んだ。小さな金属が鳴り合う音が聞こえてくる。

(……鎖?)

 ちらりと見えた、古宮さんの手元で光る紐が垂れた物は、頭の中の手錠のイメージよりも大きく、太かった。

「ねえ」

 特別な手錠なのかな、と凝視しようとしていたら、また、広瀬さんが背後に向けて呼び掛けてきた。今度は自分らしい。

「喉、乾いてるでしょ。お茶あるから飲んで」
 片手で運転したまま、開栓していないペットボトルのお茶を、シートを超えて差し出してくる。「早く取ってよ、危ないから」
「え、うん。……いただき、ます」
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