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なりすました姦辱
第3章 報復されたハーフモデル
 愛梨はごく小さく首を振りながら言い、言い終わって閉じた唇の向こうで、こくんと、口内に残るホイップ味を呑み込んだ。

(うっ……)

 その可憐な唇を見た土橋の形代が、亀頭を持ち上げようとしてきた。
 やっとのことで許してくれたフェラチオをしている愛梨の姿が脳裏に浮かんできて、慌てて打ち消す。

 だが退けようにも、爛れるような嫉妬がこれを妨げた。

 保彦が知っているのは、ベンチの座り方すら麗しいこの愛梨が、漲った男の茎を手の中に握り、その指から突き出た尖端へ、いま結んだばかりの唇を、楚々と這わせている姿までだった。

 土橋にベッドに連れ込まれて、もっと淫らな舐め方を求められ、愛梨は羞恥に震えつつも、大事な恋人のために応えてしまっているのかもしれない。愛し合うときには、正常位以外の繋がり方もあることを、シーツの上の小柄な体を縦に横に、表に裏にされて教えられているかもしれない。「恥ずかしすぎるから、暗いところでして」と言っていたのに、保彦はブランケットの中でしかしたことのない指と口での愛撫を、煌々とする中で大きく脚を開かされて、全てを鑑賞されながら施されているのかも──

(ぐっ……)

 救出を急がなければならなかった。

「そのお話とは、あなたが今、交際されている、武藤保彦さんのことなのです」

 さっきよりも深く、愛梨の眉間が刻まれた。

 なぜ、自分の名前も、従妹の名前も、そして、大事な恋人の名前も知っているのだろう、そんな表情に見えた。

 愛梨、それは俺が武藤保彦だからなんだ。
 お前が武藤保彦だと身を預けているのは、土橋哲郎という淫獣なんだ。

 このベンチに座って話したことを、自分と愛梨しか知らないことを、ひとつやふたつではない、いくらでも話すことができる。その胸やけがしそうなコーヒーを指摘された時、何と答えたかも、一言一句思い出せる。

 あれもこれも、詳しく話をされれば、愛梨だって信じずにはいられないはずだ。

 そして愛梨は、醜い体に閉じ込められてしまった恋人を、何としてでも元通りにしなければと心に決めるのだ……。

「つまりですね──、お隣、失礼します」

 保彦は愛梨の隣に腰掛けた。

 すると入れ替わりに、愛梨は立ち上がった。

「あの、ほんとに。……おっしゃられていることが、わからないので」
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