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なりすました姦辱
第3章 報復されたハーフモデル

たとえただの通行人であっても、周りに誰かがいる、すなわち自分を見ているかもしれない他人の目があると思えば、モデルとしての矜持が備わってきたのだろうか、奏功してうまく記憶を封じることができた。
しかし……。
「はーい、じゃ休憩しよー」
トレーナーが、厳しかった声を和らげた。
巨大な鏡の填められた壁際に座り、リュックから取り出したタオルで汗を拭きつつ、トレーナーの様子を窺ったが、彼女は折り畳み式の小さなテーブルで何か書き物をしていた。質問したり、雑談をしたかったけれども、自分のために取ってくれているメモだと思うと、声をかけることができない。
しかたなく、SNSにでも逃れて気を紛らわせようと取り出したスマホに、メッセージ通知が表示されていた。
『ついたよー
飲み物マリちゃんのぶんも買っておきました
さーて この広い場所でお姉ちゃんを見つけられるかな?
ヒントをあげよう』
木立や池が映った写真が添えられている。
(愛梨ちゃん……、愛梨お姉ちゃん)
土橋が、何故に従姉のことを知っているのか、何故にあんなにも鬼気迫る勢いで問い詰めてきたのかは、わからない。やがて『奴隷』に『指示』されてきたのは、その従姉を呼び出せ、というものだった。
小学生のときコンプレックスになっていた小麦色の肌を「羨ましい」と言ってくれ、黒ギャルになったときも「カッコよ」と言ってくれた従姉である。父とは違い、真璃沙が幼い時からオール肯定で接してきてくれた従姉である。四歳も上なのに、見た目は妹のような可愛らしさを備えた従姉を……土橋がどうしようというのか、答えを知りたくないのに、自らに起こったことを顧みるだけで、容易に想像できてしまう。
いくらモデルとしての将来を台無しにしかねない動画を握られているとはいえ、そんな愛梨を、自分は売ってしまったのだ。
今ごろ、愛梨は……。
スマホが震え、上部から通知ダイアログが下りてきた。
「……あのっ!」
真璃沙がトレーナーに声をかけると、彼女は書き物に目を落としたまま「んー?」とだけ返事をした。
「トイレ、行ってきていいですか」
「オッケー。でも、お手洗い、って言ったほうが、お上品かな」
「はい、ごめ……いえ、すみません。あと、外の自販機で水も買ってきたいです」
「んー、行っといでー」
しかし……。
「はーい、じゃ休憩しよー」
トレーナーが、厳しかった声を和らげた。
巨大な鏡の填められた壁際に座り、リュックから取り出したタオルで汗を拭きつつ、トレーナーの様子を窺ったが、彼女は折り畳み式の小さなテーブルで何か書き物をしていた。質問したり、雑談をしたかったけれども、自分のために取ってくれているメモだと思うと、声をかけることができない。
しかたなく、SNSにでも逃れて気を紛らわせようと取り出したスマホに、メッセージ通知が表示されていた。
『ついたよー
飲み物マリちゃんのぶんも買っておきました
さーて この広い場所でお姉ちゃんを見つけられるかな?
ヒントをあげよう』
木立や池が映った写真が添えられている。
(愛梨ちゃん……、愛梨お姉ちゃん)
土橋が、何故に従姉のことを知っているのか、何故にあんなにも鬼気迫る勢いで問い詰めてきたのかは、わからない。やがて『奴隷』に『指示』されてきたのは、その従姉を呼び出せ、というものだった。
小学生のときコンプレックスになっていた小麦色の肌を「羨ましい」と言ってくれ、黒ギャルになったときも「カッコよ」と言ってくれた従姉である。父とは違い、真璃沙が幼い時からオール肯定で接してきてくれた従姉である。四歳も上なのに、見た目は妹のような可愛らしさを備えた従姉を……土橋がどうしようというのか、答えを知りたくないのに、自らに起こったことを顧みるだけで、容易に想像できてしまう。
いくらモデルとしての将来を台無しにしかねない動画を握られているとはいえ、そんな愛梨を、自分は売ってしまったのだ。
今ごろ、愛梨は……。
スマホが震え、上部から通知ダイアログが下りてきた。
「……あのっ!」
真璃沙がトレーナーに声をかけると、彼女は書き物に目を落としたまま「んー?」とだけ返事をした。
「トイレ、行ってきていいですか」
「オッケー。でも、お手洗い、って言ったほうが、お上品かな」
「はい、ごめ……いえ、すみません。あと、外の自販機で水も買ってきたいです」
「んー、行っといでー」

