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なりすました姦辱
第4章 隔絶された恋人
 奴隷が三人になってからは、和気藹々とは言わないまでも、一様に痴戯に耽溺しているという点では、比較的穏やかな状況だと言えなくもなかった。真璃沙が須賀の写真を撮ってきた時も、汐里に見せ、彼女が──照れはしないだろうが、激昂するか、鼻でせせら笑って、それで終わり、という未来もあり得た。
 
 けれども、土橋が目配せをしてきたのだ。
 黙っていろ──胸先を抓られた快美に、涼子は口を噤んだ。

 機微情報ながら、立場上、土橋が休職に追い込まれたのは須賀との折り合いが悪かったのだ、という情報は耳に届いている。

 土橋にとっては、須賀は自分を追い込んだ憎い相手、ということになる。

 汐里に恋人がいるということは、痴宴の衆のあいだでは周知の事実だった。土橋も、それを気にしていない様子だった。
 だが、彼女の恋人が誰か、ということを、涼子は知らずにいた。別に知るべきことではなかったからだ。

 そして、土橋も、知らずにいたのだ。

 汐里がいかなる落ち度によって土橋に「処分」されてしまったのかははっきりとしないが、彼女は、須賀に対する復讐の犠牲とされたのかもしれなかった。もしくは、汐里も恋人から土橋の休職理由を知らされていたかもしれず、知っていてなお、奴隷としていけしゃあしゃあと拝跪し、悦楽を享受している悪行を誅されたのかもしれない。

 自分は、土橋に与したことになる。
 しかし呵責が無ではないにせよ、涼子の胸の内は安堵感のほうが大半を占めていた。

 汐里は、一線級のビジネスパーソンとして名を馳せている自分にとっては近すぎた。特に、汐里も真璃沙も知らされていないであろう土橋の「意向」を受け取った以上、真璃沙を御するのは造作もないことだが、目をかけてきたとおりに有能で有望な汐里は、とてつもない危険因子に映っていた。

 その汐里が、もう、いなくなったのだ──

「で、何だ? 涼子」

 土橋は全裸のまま、背中のクッションに凭れて横柄な姿勢となっているが、涼子のほうは凛とした姿勢を保ったまま、

「あの、一週間ほど前に、ご連絡をいただいた件ですが」
「連絡? ……ああ断薬のことか」
「だんやく?」

 脇から真璃沙が尋ねくるが無視をする。
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