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なりすました姦辱
第4章 隔絶された恋人
「最近、涼子さんが、い、家に帰ってくる前に、ど、どこかに寄っているのがわかったんだ。お、お前の家に、は、入ってって、るのは、知ってる、んだぞ。後をつけて、み、見てたんだからなっ。と、ときどき、買い物袋も、持ってたぞ」
「ああ、なるほど」

 さてどうしようか。

 当たり前だが、本当のことを言うわけにはいかないので、

「まあ、つまり……、涼子さんと、お付き合いさせてもらってるからね。一緒になろうと思ってるんだ」
「ウウ、ウソだっ!!」

 そっちから訊いておいて、頭ごなしに否定されても困る。

 ストーカー行為を自白されずとも、この甥が、涼子に肉親以上の感情を持っていることはすぐに察せられた。

 それにしても、痴宴の最中にドアを叩いて押しかけられなくてよかった。さすがに繕えない。ただ、涼子がアパートに入っていくところを見たということは、汐里や真璃沙のことも見ているだろうから、

「けれど、ウチの娘たちには大反対されているんだ。毎日話し合いをしているんだけど、なかなかうまくいかなくてね。涼子さんは仕事が忙しいし、結婚後も続けてもらおうと思ってるんだけど、上の子はこれまで母親代わりに家のことをやってきたから、涼子さんが家庭に入らないことに強い反感があるみたいだ。下の子は、あまり子供が好きではないんだよ。特に幼さい男の子は『きたない』とか言っててね。まあ結局は、娘の躾に失敗してる俺の責任なんだけど」
「そっ、そんな娘が、いるんじゃ、りょ、涼子さんは、幸せには、でき、ないぞっ」

 よくスラスラとこんな嘘が出てくる自分に感心したが、あっさり信じたようだった。いやいや、汐里が娘だとすると19歳で仕込んだ子ということになるし、真璃沙も娘となれば、その母親はいったいどこの国の、土橋の遺伝子を完全駆逐する超絶美人なのか。そんな女を、土橋が射止められるとでも思っているのだろうか。その後話を続けているうち、郁夫という名前とわかったこの甥っ子は、どうやら世間を知らなさ過ぎて、疑うということに全く慣れていないようだった。何かと御しやすそうで、警戒レベルは途中でずいぶん下げるどころか、安全宣言ののちに解除されていた。
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