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なりすました姦辱
第4章 隔絶された恋人
 よくよく思い出してみると、真璃沙の脚に勃起を擦りつけ、ヒップをつかんだ犯人は何者だったのだろう。あの時、他にどんな人間が乗っていたか思い出せないが、別の女もいたはずである。よりにもよって、いかにも騒ぎ出しそうな、そして実際に騒いだギャルに、手を掛けることはなかったのではないだろうか。

 そもそも……、茶髪の学生風の男なんていたか?
 もっと他にやりそうな奴が、乗っていたではないか。

「私を、許してくれるんですか……?」

 駅を出てすぐにあったショッピングセンターのベンチに座った草野は、項垂れたままそう言った。

 もし、その時にわかっていれば、むろん憤怒は草野に向いただろうが、今となってはどうしようもなく、どうでもいいことだった。

「とりあえず今日は、警察に突き出したりはしませんよ。やらなかったわけですし。これまで、どれだけやってきたかも知りません。ただ、これからも、やるつもりならば──」
「ち、違うんですっ」

 温情に縋ろうというのか、草野は身の上話をし始めた。

 自分は入学してきた真璃沙を一目見た時から、エキゾチックな顔立ち、一般人とは思えない嫋やかな肢体、そして輝くような小麦色の肌に、教師としてあるまじき感情を抱くようになってしまった。もともと、教員になるまでずっと柔道に打ち込んできた自分の周りには、あんなにも眩しい女の子はいなかった。

 だが自分は真実、邪な目で彼女を見ているわけではない。

 それが証拠に、自分は女性と性交渉ができない。大学時代に地域の柔道クラブへ教えに行った時、中学生の女の子と良い雰囲気になって事に及ぼうとしたが、初めて女の子の性器を見て、柔道着の中で早漏してしまったのを大笑いされて以来、昂奮して勃起はするものの、怖くて挿入できない体になってしまったのだ。

 だから自分は、世の男どものように、真璃沙を単なる肉欲の対象として見ているわけではない。彼女のSNSを閲覧して自慰をしている程度で、或る意味、純愛と言えるだろう。

 しかし真璃沙の卒業後の喪失感に耐えられず、教職を休職し、ふらふらと、かつての彼女の通学路線に乗っていたら、あの日、彼女本人を見つけてしまったのだ。
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