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なりすました姦辱
第1章 脅迫されたOL
 まだそこまで肌の劣化に怯える歳ではないはずだ。けれども「緩み始めちゃってからでは遅いんですよね」とエスティシャンの言った言葉が頭から離れず、セールス文句であることは間違いないのに、翌日には次の予約を入れてしまっていた。

 同年代に比べれば、悪くない給料を貰っている。しかし、このレベルのサロンに定期的に通えるのは、ごく一握りのセレブだけだ。

 分を越えた出費は、すぐに汐里を金銭的な苦境に立たせた。

 そんな時、ネットでとあるアルバイトを知った。
 会社は副業を禁止している。そうでなくとも、平気で人に言えるような仕事内容ではない。

 だが、自分ならばうまくやれるのではないかという密かな自信も、胸の中には常に薄く漂っていた。

 危なくなったらすぐにやめればいい。始める前に根拠を補強していたが、実際に始めてみると、心構えが馬鹿らしくなるほど簡単な仕事だった。或る意味、接客業と言えるが、キャバクラやガールズバー、ましてや風俗などと異なり、身バレする可能性はかなり低そうだ。しかも時給制だから、働けば働くほど金がもらえる上、成果に応じて「オプションインセンティブ」と名付けられた手当が上乗せされる。闇バイトに手を出すなんて、自分レベルの女には、無縁のことなのだ。仕事に貴賎なし、とは、詭弁以外の何物でもない。

 普段から周りに目が行き届くし、相手の考えていること、望んでいることを察するのが得意だ。そしてどう応対してやれば、自分にとってより望ましい結果が得られるのかも、まるで手に取るようにわかる。

 培ってきた優れた容姿と、培ってきた対人能力によって、入会金と半年コースのために組んだローンぶんなど、すぐに稼ぎ出すことができた。しかし、その時点で立ち止まることはできず、もっと稼げば、もっと自分を磨くことができる、平日昼間は働いているため、アルバイトができる時間は限られている、となれば、オプションインセンティブの部分で稼ぎを増やすしかない──

 それは、何もかもうまくやれる自分の、たった一度の、ごく些細な、「ミス」だったのだ。

(うっ……)

 膝をついた男が、目前までにじり寄ってきた。
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