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なりすました姦辱
第2章 制裁されたシングルマザー

「そう、土橋さん。たしか、人事コンサルの所属だったかしら。……でも、仕事をお休みしてるって聞いた気がするけど」
「はい、そうです」
「休職中の土橋さんが、どうしてウチの広瀬さんと打ち合わせ?」
朗らかとは言いがたい面差しで、露骨ではないにせよ、眸色には土橋のことを完全に見くびっている冷ややかな光が宿っていた。
「あの、先週、ディレクターに報告させていただいたF社の案件、ヒューマンリレーションに関する分析で、一部、人事コンサル部門にも支援をしてもらってまして」
汐里が代わりに答えると、
「ああ、そう。でもそういう依頼は、須賀くんでしょう?」
「アイツ……じゃなかった、須賀さんも昇進して忙しいみたいです」
「そうそう、広瀬さんと須賀くん、同期だったわね」
女は組んでいた腕を外し、汐里の肩にそっと手を遣った。
「大丈夫、同期の昇進一番乗りは彼に譲ったかもしれないけど、広瀬さんならじきに追いついて、追い越すわ。私は、ちゃんと評価してるもの」
「ありがとうございます」
汐里は体の前に手を揃えてお辞儀をし、控えめに感謝している笑顔を作り出していた。知り合って二日ではあるが、これくらいの佞言媚態は、お手の物だろう。
「けれど、休職中の人を出社させて打ち合わせする、というのはいただけないわね」
「いえ、私が」
今度は保彦は口を挟み、「休職前にお伝えした分析結果に一部漏れがありまして。どうしても伝えなければ気になって仕方がなかったので、無理を言って広瀬さんに出てきてもらったんです。広瀬さんは悪くありません」
自分を庇う土橋に驚いている汐里へ体を向けたまま、女は顔だけをこちらへ向け、しばし瞼を細めたが、
「そう。じゃ、引き継ぎは済んだのかしら」
「はい」
「他に漏らしたり忘れてること、ない?」
「ありません」
「じゃ、安心してお休みができるわね」
棘が何本も突き出た言葉を土橋に投げたあと、興味を失ったかのように汐里のほうへとその冷たくも美しい面貌を戻した。
「広瀬さんの優しさに免じて、見なかったことにしましょう。でも……」
女は鮮やかに色づけた唇を汐里に少し寄せ、
「You know, you gotta be choosy about who you're nice to.(あのね、優しくする相手はちゃんと選びなさい)」
と言った。
「はい、そうです」
「休職中の土橋さんが、どうしてウチの広瀬さんと打ち合わせ?」
朗らかとは言いがたい面差しで、露骨ではないにせよ、眸色には土橋のことを完全に見くびっている冷ややかな光が宿っていた。
「あの、先週、ディレクターに報告させていただいたF社の案件、ヒューマンリレーションに関する分析で、一部、人事コンサル部門にも支援をしてもらってまして」
汐里が代わりに答えると、
「ああ、そう。でもそういう依頼は、須賀くんでしょう?」
「アイツ……じゃなかった、須賀さんも昇進して忙しいみたいです」
「そうそう、広瀬さんと須賀くん、同期だったわね」
女は組んでいた腕を外し、汐里の肩にそっと手を遣った。
「大丈夫、同期の昇進一番乗りは彼に譲ったかもしれないけど、広瀬さんならじきに追いついて、追い越すわ。私は、ちゃんと評価してるもの」
「ありがとうございます」
汐里は体の前に手を揃えてお辞儀をし、控えめに感謝している笑顔を作り出していた。知り合って二日ではあるが、これくらいの佞言媚態は、お手の物だろう。
「けれど、休職中の人を出社させて打ち合わせする、というのはいただけないわね」
「いえ、私が」
今度は保彦は口を挟み、「休職前にお伝えした分析結果に一部漏れがありまして。どうしても伝えなければ気になって仕方がなかったので、無理を言って広瀬さんに出てきてもらったんです。広瀬さんは悪くありません」
自分を庇う土橋に驚いている汐里へ体を向けたまま、女は顔だけをこちらへ向け、しばし瞼を細めたが、
「そう。じゃ、引き継ぎは済んだのかしら」
「はい」
「他に漏らしたり忘れてること、ない?」
「ありません」
「じゃ、安心してお休みができるわね」
棘が何本も突き出た言葉を土橋に投げたあと、興味を失ったかのように汐里のほうへとその冷たくも美しい面貌を戻した。
「広瀬さんの優しさに免じて、見なかったことにしましょう。でも……」
女は鮮やかに色づけた唇を汐里に少し寄せ、
「You know, you gotta be choosy about who you're nice to.(あのね、優しくする相手はちゃんと選びなさい)」
と言った。

