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なりすました姦辱
第1章 脅迫されたOL


 朝の通勤通学の時間帯なのだから、降りる人間も乗る人間もホームに犇いていた。外へと向かう人の流れに乗るも、ずいぶんと時間を要してようやく、階段のふもとへと辿り着く。

 段に目線を向けて昇っていると、すぐ前を歩く女のふくらはぎが見えた。スカートをパンパン張らせた大きな尻から伸びる、これまたボリューム満点の脚。いっぽうの足首は、これらを支えるにしては頼りないくらいに細く、更には細高いヒールを履いている。こんなの履いてよく歩けるな、と、保彦は段に踏み出されるたびに軋んでいるかのような足首に感心し、気の毒がり、だがおおかたは漫然と眺めながら、後を追いて行った。

 昇り切ってコの字に巡ると、改札が見える。

(ん……?)

 思っていた景色とは違った。

 出口を間違えたのかな、と思ったが、そもそも根本的に、何かが違った。

 違和感を整理するため立ち止まりたかったが、改札機に向けて列が狭まり、背後から切迫してくる人波のせいでできなかった。まずは出ようと、かざすべきスマホを内ポケットの中に探す。が、いつも入れている場所に無い。あれ、と焦ってジャケットの外ポケットに手を入れると、パスケースが出てきた。

 これもおかしい。しかし改札は目前だった。
 咄嗟に読み取らせると、異常を知らせるチャイムは鳴らず、恙無く通過することができた。

 デジタルサイネージが埋め込まれた柱が並んだ広場へと出て、人の流れを脇に避け、中洲となった柱のそばで、やっとのことで立ち止まることができた。頭上の案内表示には、右に行くとJR、銀座線、真っ直ぐ行くと京成線。背後を見ると、灰色の丸に囲まれたHのマーク。日比谷線に乗っていた、というわけだ。

 まるでそんなつもりはなかった。日比谷線なんかに用はない。

 というか……【乗った憶えがない】。

 壁に貼られたポスターの中で笹を齧っているパンダと目が合った。
 どうやらここは、上野らしい。

 朝起きて身繕いをし、自宅を出て、最寄駅から西武線に乗った。目指していたのは新宿。10時から第一希望の企業の、最終選考対象者への説明会がある。敢えてリモートではなく対面で呼び出しているということは、説明会と見せかけたプレ最終選考の可能性もあり、事故遅延など何があるかわからないので早めに現地に行き、近くにあるタリーズコーヒーで時間まで待つつもりでいた。
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