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なりすました姦辱
第2章 制裁されたシングルマザー
 とはいえ、親子の時間を最大限取っていても、常に母親がそばにいる子に比べたら、俊介に寂しい思いをさせてしまっているのは確かだった。何とか、寂しく思う瞬間をひとつでも取り除いてやりたい。

 だが──

「それから?」
「んと、おふろ入って、……それから、ゲーム!」

 また、涼子の顔は曇った。
 しかし俊介の前なので、すかさず繕わないわけにはいかず、

「……お、おか、えりなさい、りょ、涼子さん」

 なかなかリビングに入ってこない二人を待ちかねたのか、奥から出てきた郁夫へ、顔を向けざるをえなかった。

 涼子と五つ離れた兄もまた、結婚に失敗していた。涼子ほど優秀ではなかったが、気の優しい兄と涼子は仲が良かった。昔から気性が激しいところがあった涼子の良き理解者だった兄は、気が優しいがゆえに妻に浮気され、なのに何故か相手の方から何やかやと理由を付けられて、大した反論もできず金を取られ、子供は押し付けられたあげくに離婚させられていた。

「ほんと、結婚がヘタクソな兄妹だよなぁ、俺たち」

 兄へ自分の離婚の連絡をすると、のほほんと言った。下手糞だから修羅場を経験したわけではなかろうに、いかにも兄らしい鷹揚すぎる言葉に、涼子は癇に障るよりもむしろ棘くれていた心を癒された。

 兄がいてくれることが、涼子にとっては精神的な助けの一つになっている。何か実のある援助をしてくれなくてもいい、ときどき話して、和まされて、妹ぶらせてくれればそれでいい。逆に涼子は、金銭的な援助が必要になったら言ってくれと伝えてある。一度も頼られたことはないが。

 兄は、いいのだ。

 郁夫は俊介の従兄とはいえ、兄は自分よりずっと早くに子供をもうけたので、もう18歳だった。

 郁夫は中学2年生あたりから学校に行かなくなった。ふくよかな体つきで色白、人と話そうとすると緊張によって、目立つ頬の赤みが顔全体に広がり、吃音になる。中身についても、気が優しいという兄の気質を、愚鈍という悪い形でばかり受け継いでしまった。これらが原因で、中学では入学するなりイジメを受けたらしい。高卒認定資格を目指しているが、一度失敗して目下浪人中である。

「ありがとうね、俊介の面倒見てくれて」
「こっ、これくらい、お、お安い、御用、だよ。い、いつでも、大丈夫」

 身内に対しても緊張するのだろうか──、いや、違う。
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