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なりすました姦辱
第2章 制裁されたシングルマザー
 全体構想は保彦が行ったが、詳細なシナリオは汐里が考えた。外部の人間がいろいろ案を搾るよりも、同じ会社、同じ組織、しかも部下が考えたほうが、リアリティが増すと践んだからだった。

「いま私が担当している業務改善案件の参考に、先輩がたの過去の提案資料や会議録を拝見させていただいたんです。たとえば、一昨年沢田さんが担当されていたC社の業務改善の一環で、アウトソーシング先が切り替られた件は憶えてらっしゃいますでしょうか?」
「ええ、Kに切り替えた話ね。特に切り替える理由はなかったけれど、トータルコストは下がるから、私たちとしても受け入れた……でもリスクはあったけれど、その後、問題は発生していないと聞いてるわ」
「はい。ですがディレクターのおっしゃられるとおり、切り替える理由はなかったんです。従来の発注先に落度や不安は何もありませんでしたし、長年担当しているだけに、C社の業務には精通していたでしょうし。改善計画については経営会議で決議されたのですが、沢田さんにお伺いすると、アウトソーシング先については、当時のチェン社長の……いまの会長のゴリ押しだったそうです」
「でもワンマン経営の企業だと、なくはないことじゃない?」
「おっしゃられるとおりです。私が気になったのは、今回私が参照した資料に、K社があまりにも多く出てくる、ということなんです」

 汐里はここで、小さく咳払いを入れた。緊張しているのかどうか、テーブルの下では表情を窺い知ることはできないが、パンプスを時折擦り合わせているところを見ると、泰然自若と事に及んでいるわけではなさそうだ。

「もちろん、業者選定でK社が採用されていることには、ひとつひとつに理由が示されています。誇張や虚偽があるわけではありませんし、すべての案件がK社、というわけでもありません。ですが、業種・業界を越えて、あまりにもK社が受注していることが多いんです。どう考えても勝ち目がないところも、ひっくり返していたり……。それで、K社を採用した企業の経営陣や上位層をピックアップして並べてみますと……」
「みると?」
「……すべて、プリンシパルが過去に担当されたことのある企業の、その当時の担当者であったり、コミッターでした」
「なるほど……」

 すると汐里は、

「申し訳ありません。実は、根拠はこれだけなんです」

 と、声をしおらしくして言った。
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