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なりすました姦辱
第2章 制裁されたシングルマザー
 正面のチェアが少し引かれ、斜めに揃えられていた脛の一つが上がっていき、もう片側の膝の上を越えていった。

 今日の涼子はベージュのセットアップスタイル、膝の隠れるセミフレアスカートだった。いっぽうの汐里はグレーのパンツスタイル、そこまでスキニーなものではない。毎夜姦虐され過ぎて、以前のごとく果敢に腰下のラインを見せるスタイルが怖くなったのかもしれない。

 涼子はもともと、そこまで女性美を主張するいでたちはしないっぽいが、いま脚を組んだ際、膝頭が完全に覗き、片脚を差し上げた拍子に黒ストッキングの透け感が薄まった太ももが垣間見えた。汐里が相当の自信を持っている脚線は、サロン通いや自己メンテナンスの賜物であって、精緻な鋳型のような幾何美を感じさせるが、いっぽうの涼子のほうは、彼女が自分の下肢にどれだけの自信を持っているのか、──おそらくは肉体の部分々々に局所的な自信など持っておらず、自分の存在そのものに自信を持っているのだろうが──、充分な熟れ味を帯びた肉付きが、長身にゆえの脚の長さからくる質量とも相まって、拵えられた塑像のような有機美を造り出していた。

(まあ、待て……)

 膝を床に付いている狭間で、涼子の脚に触発された土橋の肉棒が哮るのを宥める。しかしかく言う保彦本人も、数日間にわたって燻り続けた腹底からの蒸騰が肉幹の芯へと凝縮されゆくのを、ひしひしと感じていた。

「……確かに、キックバックをもらっている、っていう可能性は充分にあるわね」
 しばし考えたのち、涼子が言った。「ふうん……あの、スブラマニアムさんがね……」

 その美声は、社内で行われている不正を知った戸惑いや怒りではなく、静かに湧出する喜びを悟られぬよう、押し殺しているかのように聞こえた。

「……あの私は、どうしたら、良いでしょうか……」

 汐里が、ことさらにしょげた声で伺った。見えはしないが、上目遣い、背の丸みにも気を払っているのだろう、いかにも会社にとっての不都合を突き止めてしまった、けれどもその問題の大きさが手に余っている若手女子社員を、上手く演じてくれている。

「わかった。この件は私が預かるわ」
 テーブル下の下半身の様子だけでも、涼子がフッと体の力を抜いたのが察せられた。「広瀬さんもずいぶん悩んだでしょうね。まずは、私に話してくれてありがとう」
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