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わたしの昼下がり
第1章 くわえ込む
 今日もさんざんお喋りしてそれぞれの部屋に戻っていきます。我が家は5階建ての4階。部屋の前まで来ると息が上がります。小さなリビングに置いたソファーに腰を下ろして一休み。10年前は細身のわたしでしたが三十代ともなるとしっかりお肉がついてしまいました。

 体重が増えた分だけ階段の上り下りが大変です。すれ違う誰かに挨拶されても『ハァハァ…』と息が切れてすぐに返事もできません。どすん…と腰を下ろすたびにソファーが悲鳴を上げていそうです。もうすぐ『どっこいしょ』なんて独り言をつぶやいてしまったりして…。井戸端会議でそんな話をしても『そんなことないわよぉ』とか『ちょうどいい感じよぉ』とか『わたしよりもぜんぜんマシよぉ』なんて皆さんおっしゃってくれるのですけど。

 ちょっと休憩したらお天気もいいので、洗濯を始めます。少々面倒だったりもしますが仕方ありません。洗濯機が回っている間に、食器を洗ったり、余ったお弁当のおかずを口に入れたり。体重が減らない原因であることはわかっているのですけど。

 ベランダに洗濯物を干し終わると、ようやく家事も一段落です。気分が乗っていれば、掃除機をかけたりお風呂場を洗ったりもするのですが。することが途切れるとソファーに座って新聞を読んだりチラシに目を通したりします。でも、すぐにわたしのカラダが夫婦生活が間遠になっていることを知らせてきます。窓から部屋の中には明るい日差しが注いでいますが、わたしはカーテンを閉めて隣の棟からの視線を遮ります。

 昨日の夜はちょっと期待もしていたのですけど、夫からのお誘いはありませんでした。夫の自称『黄金の右腕』はあてになりません。わたしは右手の指で自分を慰めるのが日課になっています。なんとなく触っているだけのときもあれば、アクメするまでのめり込んでしまうこともあります。そんなとき想像しているのはいろいろな情景なのですが、少なくとも夫のことではありません。

 夫との営みの中で、わたしはアクメを味わったことがありません。わたしがアクメを知ったのは、OL時代に付き合っていた上司とのセックスでした。奥さんもお子さんもいる上司でしたから、必要以上にのめり込むことはありませんでした。そのうち、別の上司からいまの夫を紹介されて寿退社しました。
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