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わたしの昼下がり
第22章 連れ込み旅館で(2)
 「作文の宿題、今日のことにする。ママとみどり台に映画を観に行きました、とても楽しかったです…って」

 娘の無邪気な言葉が胸に刺さりました。

 「ママのことはいいわよ。映画は観ていないし…」
 「ママも小学生のとき作文の宿題ってあったの?」
 「ええ、あったわよ…」

 わたしが今日のことを作文に書くとしたら…。ママは間男とみどり台の連れ込み旅館に行きました…。お部屋は『潮騒の間』でした。一本目は正常位、二本目は騎乗位、三本目は後背位の三本立てでした…とても気持ちよかったです…。

 「ママ、デパートで何買って来たの?」
 「あ…お菓子よ」
 「なに? なに? なんのお菓子?」

 △井からは『菓子折り』と聞いただけでした。

 「ええと…。それはね…帰ってからのお楽しみにしましょうね…」
 「パパが好きなお菓子を買ったんでしょ?」

 無邪気な分だけ娘の言葉が心に刺さりました。

 「じゃあ、どら焼きだね。わたしもどら焼き食べたかった。たのしみ!」

 手に提げている袋の中の菓子折りの重みは、確かにどら焼きが入っていそうでした。△井に、そんなことを話したことがあったでしょうか…。

 (あ…、あのとき…)

 確かにそんなやり取りをしたことを思い出しました。たしか、暑い日でビールを飲んでいった日にそんな話を。それにしても、万事そつがない△井…。『良妻賢母』が体よく性欲を処理する相手⦅まおとこ⦆としては、やはり最良の男なのかもしれません…。

 「あ、ピアノ教室があるっ」

 上の娘がビルの看板を指さしました。

 「わたし、ピアノ習いたいな」
 「わたしも」

 電車を待ちながら、またきっとこの駅を降りることになるだろうと思いました。娘をピアノ教室に送り、夫の好きなどら焼きを買いに行くという名目で…。ただ、二人合わせてもせいぜい一時間とちょっとでしょう。

 「ピアノのほかには、何かお稽古したいことはない?」
 「わかんない」

 そんなに何もかもうまくいくわけはない…と思いました。
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