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わたしの昼下がり
第3章 訪ねてきた男(1)
 『またお邪魔してもいいですよね? 奥さん』

 事を終えてタバコに火を付けた△井がわたしに声を掛けます。わたしは股を閉じることもできずにただ『ハァハァ』と息を荒げているだけ。何度もアクメさせて息も絶え絶えの女にそんなことを訊くなんてずるい…と思いましたが『是非、また来てください。男をくわえ込みたかったんです』などと答えずに済んだのは△井のせめてもの気遣いだったのかもしれません。わたしが久しぶりのアクメを味わっているのは一目瞭然だったでしょうから…。

 別にわたしは△井に何かモーションをかけたりした訳ではありませんでした。セールスの中味もほとんど上の空のような感じで聞き流していました。もちろん無理やり押し倒されたりした訳でもありません。気が付いたらそういうことになっていた…というのがいちばん合っている感じです。

 『奥さま、お疲れ様です。暑いですね。いつも家事でお忙しいでしょうに、この暑さでは余計に大変ですよね』

 最初に△井はそう言ったのは覚えています。夫からはかけられたことのないような言葉がうれしく、ついドアを開けてしまっていました。その後、何か、扱っている商品…百科事典か何かの説明があったような気はするのですが、わたしはただぼんやりとしていただけでした。

 『奥さま、ご気分がすぐれませんか? すみません、また、伺います』

 その言葉にハッとして我に返りました。

 『あ…、いえ、こちらこそすみません。なんだかぼーっとしてしまって…。どうぞ中へ…』

 ただ自分の商売のために各戸をまわっているセールスマンなのですから、立たせたままでも別に恐縮することもないはずなのですが、わたしが心の中でやましいことを妄想していたことを、咄嗟に取り繕おうとしたこともあったかもしれません。そのときのわたしは、この男に気の利かない女と見られたくないというふうに思っていました。もっと正直に言えば、この男を呆気なく帰したくない…と思いました。

 そして、△井はそんなわたしの胸の内をしっかりと見透かしていたのかもしれません。
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