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テレクラ
第1章 中年男と女子校生。それはテレクラからはじまった。第一話
 都内の某隣県に原田英雄は出張で訪れた。ここに来るまで電車に乗り継いで二時間かかったのに商談は一時間もかからなかった。帰るのに、また二時間かけて電車に乗るとかんがえると憂鬱だが仕事なので仕方ない。駅までタクシーで。駅について時刻表を見ると次の電車が来るまで、一時間近くあったので駅周辺を探索することにした。田舎だが駅前はそこそこ賑わっており、路地に入るとキャバクラや風俗店まである。シャワーを浴びたいので風俗店でもと一瞬かんがえたが、視線の先に懐かしい文字が眼に入った。とっくに死語であるテレクラのネオン。テレクラというカタカナのネオンは点灯している。営業中ということだろう。懐かしいなと思った。二十年以上前に嵌った頃があった。いい時間のつぶしになりそうだ。

 すきなDVDを三枚無料で選べます。壁のポップに張り出されてる。ほとんどがセクシー女優のDVD。必要ないので、受付カウンターでDVDはいいですという。愛想のない店員がコースはという。一番短い二時間三千円のコースをえらんだ。指定された部屋に階段であがる。扉を開けるとテレビにパソコンがある。ネカフェの部屋と変わらない。ちがうのは電話機があることだ。上着を脱いでハンガーにかけると電話が鳴った。原田は苦笑いした。いつも入店したら電話がかかってくる店があった。うちは頻繁に掛かってくるんです。つまりサクラだろう。だが受話器をとった。
 「もしもし、はじめまして」
 「ホテル別で二万でいいけど」若い女だ。ゴメン。お金を払ってまで逢う。そういうのはしないというと。「はぁ、なにしにきてるのバカじゃない」電話は切れた。サクラではなかったかもしれない。立ったまま受話器を置く。壁には相手が未成年からだと切ってください。未成年との性行為は犯罪です。など書かれたポップが張り出されている。これでは未成年が掛けてくる。そう宣伝してるようなものだ。

 それからも頻繁に電話は鳴る。鳴るが、すべてが金銭ありきの出会い希望。原田はすべての相手に金銭のやり取りはしないといった。無言で切られる。悪態をつかれる。切られる。それの繰り返しだった。もう平成ではなく令和なんだと実感した。
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