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テレクラ
第2章 第二話
 時刻を見る。店をでれば、ちょうど電車の時間に間に合う。原田が立ち上ろうとしたら電話が鳴った。これで最後だ。受話器をとって耳にあてる。相手はなにもいわない。無言だった。二十年以上前の記憶が蘇る。相手は金銭目当てではない。

 「もしもし」相手は無言のまま。「こっちは四十過ぎのおじさんだけどいいかな」やさしく声を掛ける。ここで切られる。そう思ったが切られなかった。「出張でこの街に来てて時間つぶしで、ついこの店に寄ったんだ」
 「どこに住んでるんですか」反応があった。声が若い。たぶん未成年だ。ここで何歳。名前は。今はいらない。訊かれたことに答えればいいだけだ。
 「横羽目市」この県とはちがうが都内に隣接する某県の主要都市。誰でもわかる。
 「仕事はおわったんですか」
 「そう、おわったから帰ろうとしたんだけど、電車が一時間以上待ちなので、この店の看板見て、なんか懐かしくて時間つぶしではいったんだ」
 「懐かしいって、この店来たことがあるんですか」
 「いや、この街に来たのははじめて。だからこの店に来たのもはじめて。懐かしいというのはテレクラ。二十年前によく利用してから」キモいと思われ切られるかもしれない。だが気にせず原田はいう。
 「今日、ワタシ以外の人と話をしましたか」
 「そうだね。ちょこちょこ電話は掛かってきた。でも全員が売春目的だったから、すべてお断りした」援助やパパ活などいわず売春といった。
 「どういう人を探してるんですか」
 「ホントに暇つぶしで来ただけ。逢うことはかんがえてもなかった」
 「昔テレクラを利用してるときは逢ったことはあるんですか」
 「あるよ」素直に認めた。
 「どういう人と逢ったことがあるんですか」
 「それは、昔のテレクラは今では想像できないかもしれないけど」当時も金銭のやりとりでの出会いはあった。でもカレシとエッチをしても気もちよくない、どうしたら気もちよくなれますかおしえてください。友達がエッチをしたからワタシもしたいけど相手がいないから電話を掛けた。家出してるんだけど泊めてくれないエッチしていいから、お金なんかいらないから。「そんな感じの娘が多かった。もう二十年以上前の話だけどね」原田は切られるのを覚悟でいった。事実そうだった。

 「今日はこっちに泊まる予定はないんですか」意外にも相手は電話は切られない。

 
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