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テレクラ
第4章 第四話
 接待を終え、原田は自宅に戻ったのは二十三時を過ぎていた。帰宅してすぐにシャワーを浴びた。スマホをチェックしてから寝よう思ったので見た。ちょうどシャワーを浴びてる最中に着信があったようだ。非通知ではない登録してない番号からの着信。こんな時間に誰だと思いながらも、先ほどの接待相手からの連絡かもしれない。そう思って掛け直した。相手はワンコールででた。

 「もしもし、すみません。先ほど電話をいただいたようで」相手はなにもいわない。「もしもし」
 「もしもしヒデオさんですか。エリカです」
 「あっ」原田は正直エリカの存在を忘れていた。たまたま出張でいった地方都市でノスタルジーを感じはいったテレクラで会話をした女子校生。今週末に上京するので逢えませんか。そういわれたが指折り数えて過ごすほど暇ではない。「エリカさんか、ゴメン。シャワー浴びてたんだ」
 「よかった。ちがう人だったらどうしようって、よかったヒデオさんで」原田さんではなく英雄さん。妙な気がする。痛い娘なのかと。
 「明日は上京するの」それでもなんでもないように訊いた。
 「はい。五反田ってわかりますか」
 「都内はあんま詳しくないけど五反田はわかるよ」
 「そこで逢うのだいじょうぶですか」ホントに来るのか。逢える可能性が半信半疑にまでなった。
 「ぜんぜんいいよ。大体でいいけど何時くらいかな」
 「夕方五時まで用事があって、そのあとでもいいですか」
 「じゃあ、五時くらいに五反田の駅にいるよ。行ったことないけど調べたらわかるから。それでいいかな」
 「はい。ありがとうございます」心の底から感謝された声。
 「なんで非通知で掛けてこなかったの」番号表示は、もしかしたらうっかりだったかもしれないが原田は敢えて訊いた。
 「さいしょは非通知にしようと思いました。でもなんかヒデオさんに失礼かなって思いました」
 「逢ってド変態だったらどうする」
 「逃げます」原田は笑った。エリカも笑っている。はじめてだエリカの笑い声を訊くのは。
 「めちゃくちゃ追いかけるぞ。覚悟しとけよ」わざと茶化した。
 「逆にワタシがド変態だったらどうします」

 ド変態だろ。いいそうになる。しりあったのはテレクラ、まだ逢ってもいない男に自分の携帯番号を晒す。ド変態ではないが、すこし頭がおかしい娘なのはわかった。
 
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