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愛の笛
第11章 葉子との再会
現地に赴き、一ヶ月が経過しようとしていた。
協力隊の面々も現地の生活に慣れ、強い日射しに日焼けして誰も彼もが精悍な顔つきになっていた。
しかし、食事の面では食べれない食材も多く
過酷な労働によって痩せていく隊員もいた。
そんな酷い環境でも誰一人として不服を言い出す奴はいない。
なぜならば、性に関してはおおらかな国民性なのか、
夜ともなれば完成された宿舎に女が訪ねてきてはセックスの相手をしてくれた。
そんなある日の事、ミーティングで作業の段取りを話していると、会議室の電話が鳴った。
「アロー」
現地ではフランス語が主流なので
今では日常会話ぐらいならすっかりマスターした越中が流暢に応対した。
- こちらは日本の外務省です -
「おい、日本からだ!」
越中が隊員にそう伝えると、全員が色めき立った。
協力隊として派遣されたものの、日本から音沙汰がなかったので、声にこそ出さないが誰もが太平洋戦争で終戦間際の南国に取り残された兵隊気分になっていたのだから当然だった。
- ひと月が経過したので、ご不便な点が多々露見してきたと思うのですが、なにを送り届ければよいでしょうか? -
「それならば、ぜひユンボを届けて下さいな
地盤が固くてマンパワーではどうにもならんのですよ」
- 特殊車輌は無理ですよ…そうですねそちらの国に調達して欲しいと要望を出しておきましょう -
「それと、食糧をお願いしたいのですよ
どうにもこちらの食事は口に合わなくて…」
- 保存食のようなものでいいでしょうか? -
「カップ麺とかを考えているんならぶん殴るぞ
こっちはな水が不味いんだよ!生水は怖いから一度沸騰させた湯ざましを飲むようにしているけど、濁っているし、匂いも臭いし、日本みたいに美味しくカップ麺を食えるとは思わないでくれ」
- ではどのような… -
「幸いにも冷凍庫も電子レンジもあるんだ
だから冷凍食品とチンすればいいだけの米があるだろ、それらを持ってきてくれ」
- わかりました。今しばらくのお時間を下さい -
「なんでさっさと用意出来ないんだよ!」
- 何事もこちらの一存ではどうにもならないことがあるんですよ… -
「お宅の都合なんてどうでもいいんだよ!
とにかく早急に手配してくれ」
頭に来たのか、越中は荒々しく電話を切った。

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