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愛の笛
第11章 葉子との再会
それから数日、
協力隊の面々は日本からの差し入れを今か今かと待ちわびたが、到着する気配がない。
やはり俺たちは見捨てられた存在なんだと諦めかけた頃、
一機のヘリコプターが草原に降り立った。
ヘリコプターには日の丸がくっきりとペイントされていた。
どうやら自衛隊の輸送機のようだ。
貨物のゲートが開いて、まるで災害派遣で送り届けるかのような荷物が次々と降ろされてゆく。
冷凍、冷蔵を必要としない缶詰類の保存食。
20リットルの飲料水バッグ。
そしてフリーマケットでも開くのかと思うほどの衣料品と医薬品の数々…
まるで、これだけ支給するんだから
数年は帰国せずに頑張れと言っているに等しかった。
それでも隊員たちは諸手を上げて喜んだ。
搭乗ゲートが開いて仰々しくサファリルックに身を包んだお役人がふんぞり返ってタラップを降りてくる。
「リーダーはどなたかな?」
出迎えた隊員たちを舐め回すように一瞥して
分厚いレンズのメガネをかけた男が声をあげた。
「私です、リーダーの越中と申します」
泥だらけの手を差し出して握手を求めたが、
その手をチラリと見ただけで役人は手を差し出して握手をしようともせず、代わりに手を腰の後ろに回して胸を張った。
「約束通りに物資を運んで来ましたよ
自衛隊機で越境する手続きに難儀しましてね…
でも、これで皆さんに頑張っていただけると確信します」
「ありがとうございます、協力隊一同を代表して感謝を申し上げます」
越中が役人にへりくだっているのを見ながら
草薙はゾロゾロと降りてくる役人の一行を眺めていた。
そして、最後にタラップを降りてきた女性に目が留まった。
「よ、葉子?!」
レディースサファリルックに身を包みながらも
プロポーションの良さは隠しきれず、
それはまるで荒れ地に一輪のバラが咲いたような華やかさを醸し出していた。
葉子は出迎えた協力隊のメンバーから草薙の姿を見つけると
手を振る草薙を無視して数人の役人の最後尾に整列した。
「今日一日、皆さんの活動を見届けた後、
我々は明日ババンカ国の首都に入って閣僚級の要人とレアアースの輸入に向けての協議に向かいます」
視察団の一行を一人一人紹介してくれたのだが、
誰も彼もやたらと長い役職の面々で今回のレアアースの取引きがいかに重要なのかを物語っていた。

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