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愛の笛
第11章 葉子との再会

ベッドがギシギシと軋む音がする。
だが、天候が急変して、いつの間にか窓ガラスに雨粒がバラバラと打ち付けはじめていた。

赤道付近の国ではよくあるスコールで、そのうち嘘のように雨が上がるだろうと、草薙は雨音を聞きながら、この雨音がサーシャのあえぎ声を掻き消してくれるから丁度いいかとラストスパートをかける。

そのうち、あえぎ声を消すどころではない雨音に二人は行為を中断せずにはいられなかった。
バケツをひっくり返すような雨とはよく言うが、
いまの雨量はそれどころではない。
まるで滝壺の中に落とされたような激しい雨だった。

「雨もりとか大丈夫かな?」

立派な戸建てではないだけに
心配になってくる。

「大丈夫よ、スコールだもの直ぐに止むわ」

サーシャは雨など気にせずにセックスを続けようと草薙が腰を引いて抜けてしまったペニスを再び挿入しようと試みる。

「いや、これは…ちょっと様子が変だぞ」

ピチャピチャと音がし始めたので
気になってベッドの下を見ると、ドアから浸水してきて、あっという間に足首辺りまで浸水が進む。

「いかん!サーシャ起きなさい、服を着るんだ!」

「嘘!こんなの初めてだわ!」

雨雲レーダーなどない発達途上国ゆえに警報さえ出せないのだろう。
おそらく線状降水帯が発生して村を襲っているにちがいない。

着衣を済ませて寝室のドアを開けると、一気に水が流れ込んできて、膝丈まで浸水が進む。

「ビアンカは?君の祖母と祖父は無事だろうか?」

サーシャの手を引いて祖父母の寝室を覗くと、
ビアンカと旦那さんは手を取り合ってベッドの上で体を震わせている。

「逃げよう!ここは危険だ!」

足の不自由な祖父をおんぶして家の外に逃げようとしたが、
扉が外開きのせいで、水圧に負けてドアが開かない。
水位はどんどん上昇して、すでに腰まで水に浸かってしまっている。

「屋根だ!屋根に上がるんだ!」

外に出られない以上、垂直避難しか考えられない。

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