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愛の笛
第11章 葉子との再会
必死の思いでじいさんをおぶって屋根に上がると
集落のあちらこちらの村民も屋根に登って助けを求めていた。
「いいぞ!みんな、屋根の上で水が引いていくのを待つんだ!」
屋根まで水位が上がってきたらどうする?
いいや、そこまで水位が上昇するとは思えない。
そのうち、雨があがって水位の上昇もストップするはずだ。
窪地に建てられた家屋でない限り屋根に登っていれば…
そこで草薙はハッと気づいた。
協力隊が村に建ててもらった仮の宿場はかなりの窪地に建てられていた。
みんなは?葉子は無事だろうか?
「サーシャ、おじいさんとおばあさんと体を寄せあって体温の低下を阻止するんだ。
いいね?必ず助けに来るから!」
そう言うと草薙は水に飛び込んだ。
なんとか足は着くけど、水位は彼の胸にまで達するほどに増水していた。
ここでこの水位だとすると、協力隊の宿場は水没しているかも知れない。
かなりの水流で歩くことさえおぼつかないが、
上流から流れてくる流木や瓦礫に気をつけながら
草薙は宿場へと急いだ。
。。。。。。。。
葉子は生まれて初めて激しいオナニーで死んだように眠っていた。
「起きろ!逃げろ!」切羽詰まった叫び声が激しい雨音に負けじと聞こえてくる。
「逃げろ?」
一体どうしたのかしらとベッドから足を降ろすとちゃぽんっと足は水の中に…
「えっ?何よこれ?!」
そう考えている間も水位は上昇してくる。
慌てて脱ぎ捨てた衣服を探すとすでに衣服はユラユラと水面を漂っている。
ドアの隙間から流れ込んでくる水流は激しさを増し、
あっという間に首まで水に浸かってしまった。
もはや着衣にこだわっている場合ではない。
一刻も早く建物から避難しないと溺れてしまう。
水をかき分けてドアのところまでやっとの思いでたどり着き、
鍵を解錠してドアノブに手をかけてドアを開けようとしてもドアはびくともしない。
「助けてーっ!誰か助けてください!!」
声を限りに叫んでも、皆は自分の事が精一杯で葉子を助けに来ようとはしてくれなかった。

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