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愛の笛
第11章 葉子との再会

ビアンカ国の国立病院…

国立といっても日本の市民病院のようで、それほど規模は大きくない。
葉子はすぐさま処置室に連れ込まれ、小一時間ほどで担当医が処置室から出てきた。

すぐさま草薙はその医師の元に駆け寄り
「葉子は?葉子は大丈夫なんでしょうか?」と医師の顔に唾を飛ばさんばかりに詰め寄った。

「Il n'y a aucun danger pour la vie.」

医師は穏やかなフランス語で草薙の肩に手を置いて諭すように話してくれる。
その口調で「安心しなさい」と話しているのだと理解出来た。

「どうやら命に別状はないようだよ」

越中さんが「よかったな」と草薙の肩をポンポンと叩いた。

「フランス語、わかるんですか?」

「今はね、こういう便利なものがあるんだよ」と
越中さんはスマホの翻訳アプリで医師の言葉を日本語に訳して草薙に見せてくれた。

「メルシー!メルシー!」

ありがとうございます!と
思わず草薙は医師を抱きしめていた。

「Cependant, comme le cerveau a été privé d’oxygène pendant une longue période, il peut y avoir des séquelles.」

なんて言っているんですか?
医師が表情を曇らせて語りはじめたから、それがあまりよい報告ではないことがわかる。

「脳が酸欠を起こしていた時間が長いので後遺症が出るかもしれないと言っている」

翻訳アプリの画面を見ながら越中さんは草薙にショックを与えないように穏やかに通訳してくれた。

「後遺症…」

たとえどのような後遺症があろうとも、彼女が生きてさえいてくれればそれでいいと命を繋ぎ止めてくれた事を医師に感謝した。


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