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愛の笛
第13章 エピローグ
省庁の同僚からは激励会と称して食事会に誘われたが、
出産を間近に控えて体力を温存したいからと固辞して葉子は帰路についた。
臨月となったお腹は、これでもかと膨れ上がり、双子じゃないのかしら?と思うほど体が重かった。
マンションに帰りついて部屋に入ると、リビングでは夫の草薙がベビーベッドの組み立てに悪戦苦闘していた。
「あなたってスコップの扱いは上手なのにドライバー1本もろくに使いこなせないのね」
たかがベッドの組み立てに説明書とにらめっこしている姿は滑稽であった。
「そんなことを言ったって、この組立図の説明が大雑把すぎるんだよ」
ここまで不器用な男だと思いもしなかったわと
呆れ返っているとノートパソコンからメールの着信音が鳴った。
これ幸いに「誰からだろう?」と作業の手を止めてメールを開くと越中さんからのメールであった。
「珍しいな、越中さんからだよ」
「越中さんって…あの、協力隊のリーダーだった方?」
「ああそうだよ。君も覚えているだろ?」
二人してノートパソコンの画面を覗き込み、文面を読み始めた。
- よお、草薙くん元気かね?ハートを射止めた奥さんとは仲良く暮らしているかい?
僕はいまだにビアンカ国に残って土砂災害による復興のお手伝いをしているよ。
そうそう、先日、土砂の中から君が大切にしていた例の笛を見つけたよ。真っ二つに折れていた笛は奇しくも同じ場所から掘り出されたよ。
君との思い出だからね綺麗に洗ってテープで繋いでみたんだ。
でも、やっぱり折れて壊れているみたいで吹いてみたけど音なんか鳴りゃしなかったよ(笑) -
ここまで文面を読んで、なんだか胸騒ぎがした。
- でも不思議なんだよな
近くにいたサーシャが「綺麗な音色だわ」なんて言い出すし、
急に彼女に押し倒されて、その場で抱く羽目になっちまった。
やっぱり後進国の女性は娯楽がないせいかセックスには情熱的みたいだな。
いやいや、前置きが長くなってしまったね。
そんなわけで、僕はこの国に移住してサーシャと結婚するつもりだ。
君も落ち着いて時間が出来たらこっちに遊びに来いよ -
最後まで読んで草薙は腰を抜かしてしまった。
あの笛にはどこまで魔力が潜んでいるんだ。
しかしまあ、めでたい事には違いない。

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