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愛の笛
第7章 葉子と上司

デスクに積み上げられた書類…

今はどこもかしこも電子化されてデーターはメモリースティックに収められている時代に、なんでこの部署だけペーパーなのよと紙の臭いにうんざりしながら葉子はため息をついた。

「どうだい?白木くん、データー処理は順調かい?」

足音もたてず、いきなり背後に立たれて不意に言葉を投げ掛けられ、思わずビクッ!としてしまう。

「局長、驚かせないでください!」

「いや、すまんすまん、あまりに集中しているので心配になってきてね」

「心配してくださるのなら電子化を推し進めてくださいよ」

「いやあ~、世の中はなんでもかんでも電子化したがるけどね、紙の伝票がなんと言っても一番だよ
なんたって改竄のしようがないからね」

データーベースだってパスワード制にすれば改竄出来ないはずなのに…
要は局長自身が使いこなせる自信がないからいつまでもペーパーに拘っているに過ぎないんだわ!

腹いせに「あ~忙しい!」とわざとらしくイヤミを言って
局長を無視して、伝票処理に取りかかる。

「そんなに急ぐ必要もなかろう
いざとなったら部下に仕事を回せばいいんだから
何でも全て自分でやろうと思わないことだよ」

要領よく部下を使いこなすのも出世の近道だよと
まるで手抜きを奨励するかのようにほざいて、肩が凝ってるんじゃないか?などと言いながらボディタッチをしてくる。

セクハラです!と声を荒げることも出来るが、
上司に歯向かって島流しになった同僚を幾人も見てきただけに
変な抵抗は怪我の元だとグッと我慢した。

「忙しいところを申し訳ないんだがね…
ちょっとだけ頼み事があってね…
一緒に資料室まで足を運んでくれないか」

まただ…
周りの同僚たちからは局長に目をかけられていると思われているのだろうけど、目をかけられているというよりは手をつけられていると形容するのがピッタリだった。

「ほら、早く来たまえ」

局長は周りのみんなに気づかれないように股間を葉子の背中に押し付けてくる。

「わかりました…」

仕方なく立ち上がると、イソイソと資料室に向かう局長の後を追って吐き気を催しながらついていった。

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