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愛の笛
第9章 再び海外へ
バイトでいつものようにシェーカーを振っていると
ブーブーブーと尻ポケットのスマホが震えた。
こんな時間に誰からだ?
彩佳か?
どうせろくな話でもなかろうと無視を決め込んだが、
5分おきにブーブーブーとバイブが震える。
カウンターの向こう側のお客様にはわからないだろうが、
隣でカクテルを作っている美穂さんにはそれが耳障りで仕方ない。
「ちょっとさっきからブーブーうるさいんですけど」
ロックアイスを冷凍庫から取り出すためにカウンター内で腰を屈めた時に、美穂さんも同じようにしゃがんでスマホの着信がうるさいと文句を言い出した。
「気づいてしまいました?すいません」
「どうでもいいんだけど、何回も電話してくるんだから急用なんじゃないの?」
ここはいいからバックヤードに行って電話の用件を済ませなさいよと少々おかんむりの口調で電話の用事を済ませてきなさいとたしなめる。
「それじゃ…すいません、ちょっと持ち場を離れます」
美穂さんに一言告げて、カウンターに座っているお客様に一礼して草薙は持ち場を離れた。
『ったく!誰からなんだよ』
もし、彩佳からなら仕事中はメールも電話もダメだと言っておいたのにと腹立たしく思いながらスマホの画面を確認する。
スマホの画面には『越中』と表示されている。
「えっ?越中って…あの越中さん?」
まさか、彼から着信があったなんてと怪訝に思っていると、
再び手の中のスマホがブーブーブーと震えた。
相手は同じく越中さんからだ。
「はい、草薙です」
- お~、草薙くん!やっと電話に出てくれたね -
懐かしい声がスマホから聞こえてくる。
電話の相手の越中さんはボランティア仲間で、南海の孤島で共に井戸掘りに汗を流しあったメンバーの一人で、癖のある面々をまとめてくれたリーダーだった。
「どうしたんすか?越中さんから電話をいただけるなんて」
何度も電話をくれたことに、草薙は訃報ではないかと心配した。
井戸を掘っていたメンバーの誰かが逝去したのではないかと、越中と話しながら草薙はドキドキした。
- いやぁ~、突然の電話を申し訳ない!
ちょっと君の助けが必要になってしまってね -
「僕の助け…ですか?」
言っておきますけど、僕にはお金がありませんから
借金の無心ならお断りですよと返答を返そうとした。

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