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愛の笛
第9章 再び海外へ
- 君さあ、働いてないんだろ? -
失礼な言い方だなと思った。
少しムッとしながら「いえ、働いていますよ」と返答した。
- いやいや、定職に就いてないんだろって意味だよ -
「ええまあ…でも、バイトですけどちゃんと働いてますよ」
- バイトなんだろ?じゃあ、いつでも辞めれるよね? -
「なんですか?仕事の紹介でもしてくれるんですか?」
それなら、あいにくだが今の職場が気に入っているのでと
通話を切ろうとした。
- おいおい、人の話は最後まで聞くもんだ
また海外に行かないかって話だよ -
「またボランティアですか?
残念ですが、今の僕には渡航費も滞在費もありませんよ」
- それがタダでいけるんだよ、しかも活動費も提供してもらえるんだ -
「またまたぁ~、そんなうまい話はありませんよ
どうせ危ない橋を渡れっていうんでしょ」
- それがあるんだなあ…君さあ、海外協力隊って知らないかい? -
「それって…政府主導の?」
それならば草薙だって承知している。
だが、協力隊のメンバーになるには書類審査や訓練期間などがあって面倒だと理解していた。
その旨を越中に伝えると、
- いや、俺たちの活動が認められてね、そういうのは一切免除だ。パスポートだって政府が用意してくれる特別なものだから最長で5年ほど現地で生活できるんだよ。しかも、しかもだよ、活動中の賃金さえ保証してくれるんだ -
なんと魅力的な…
草薙は迷いもなく「参加させていただきます」と越中が満足する返事をした。
カウンターに戻った草薙は迷いなくマスターの元へ駆け寄り
「今夜限りで辞めさせていただきます」と告げた。
「えっ?辞めるって…そんな藪から棒に…」
そういいながらも、不倫相手の美穂が草薙に気があることを知っているマスターは「君にも都合があるんだろうね、寂しいが仕方ないな」と引き留めもせずにあっさりと了解してくれた。
腑に落ちないのは美穂の方だった。
草薙がいなくなることで、再び仕事中もマスターから客の目を盗んで体を触られる生活が戻ってくるのかと落ち込んだ。

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