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愛の笛
第9章 再び海外へ
滑走路の外れに二台のバスが待機していた。
バスでの長距離移動なのだからフルリクライニングの出来る観光バスを想像していたが、バスに近づくにつれてその姿に驚いた。
なんと、日本の民間バス、しかも路線バスなのだ。
車体には日本語の広告ペイントがそのままであった。
「日本とはかなりの友好関係にあってね
バスなんかも日本では引退しているが、ここではれっきとした実用車みたいだよ」
ババンカ国についてはレクチャーを受けていたのだろう。
越中は現地ガイドさながらにいろんなことを教えてくれた。
長年、フランス領だったことから言語はフランス語を使っていること、通貨はババンカフランだということ、トイレは水洗ではなく、いわゆるぽっとんトイレだとか…
そして予想していた通り道路は舗装などされていなくて、
デコボコの道なき道をバスが疾走してゆく。
未舗装のデコボコ道なので体は右に左にと揺られてしまう。
こんな状態で一日半もバスに揺られるのかと思うと、
到着する前に体力を消耗しそうだった。
「日本が海外協力にこの国を選んだのは訳があってね
どうやらレアアースが豊富に採れるそうなんだ
中国依存を脱却するためにも、ババンカ国との友好を深めるのが目的なんだそうだ」
やはり政治絡みか…
だから政府主導のこういう活動はダメなんだよと
草薙はゲンナリした。
「で、僕らは何をすればいいんですか?」
「インフラ整備だよ
用水路を作るのと、このガタガタ道を整備してゆくんだ」
なんだ、それなら重機を使えば案外と早く整備できそうだな
そのように考えていると「まさか、重機でチャチャと出来ると考えているんじゃないだろうな?」と越中に心を見透かされてしまった。
「誰でもそう思うんじゃないですか?」
「甘いな君も、未開と言ってもいいような後進国なんだぞ、
ユンボはおろかシャベルカーさえあるもんか」
「えっ?!じゃあ…手作業で?」
「そう、こういった秘境とも言える国では全てがマンパワーなんだよ」
それを聞いてもメンバーたちは驚かない。
それなりのレクチャーを受けていたのだろう。
何も知らなかったのは草薙ただ一人だけだった。

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