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愛の笛
第10章 レセプション

ババンカ国に到着後、
協力隊の面々は現地視察をさせていただいた。

高原の湖から用水路を村に敷いてゆくというのが一番の難関だと思えた。
なにせ、地盤は固く、岩もゴロゴロと転がっているのだから。

こりゃ、重労働になるなと隊員たちは憂鬱そうな表情をしたが、越中と草薙だけはかえって目を爛々と輝かせていた。

「やりがいがありそうじゃないか」

越中が満面の笑みを浮かべて草薙に告げた。

「ええ、まったく。たかが数キロの用水路を敷くのに何名の脱落者が出るのか見ものですね」

いかに重労働かということは現地の人々も理解していた。
だからその夜は村をあげての歓迎会を開いてくれた。
そう言っても食べ慣れた食材はほとんどなく、
隊員たちは料理に手をつけずにフルーツばかりを貪っていた。

「君たち、失礼な奴らだな。
これほどの食材を調達するのに彼らがどれ程苦労したかわかっているのかい?」

旨そうに肉料理を口にしながら草薙は若い隊員を叱咤した。

「でも草薙さん…これ、絶対に牛や豚の肉じゃないですよ」

「ああ、わかっているよ。多分、これはワニの肉だよ」

「ワニ?そんなもの食べれるんですか?」

「これが彼らにとって、最高の蛋白源なんだよ
食わず嫌いはやめてしっかり食べておかないと体力が持たないぞ」

そう言って草薙はチラリと越中を見た。
彼もまた豪快に肉料理を口に運んでいた。

「ふん!今時の若いやつは体ばかりデカくて度胸が座ってないんだな」

そう言いながら越中は草薙を見つめて
『お前に来てもらって正解だったよ』とニンマリと微笑んだ。

酔いが回ってくると、そろそろ休みたいとそれぞれが生欠伸を噛み殺しながらリーダーの越中に訴えた。

「皆に伝えておかないといけないことがある」

越中は酔いが回ってきているのか、フラフラしながら立ち上がり「飯場の建築が遅れているそうだ。あと、二三日はかかりそうなんだが、その間、みんなには分散して村人のお宅にご厄介することになった」

ええ!?そんなぁ~!
現地語はフランス語ですよね?
コミュニケーションなんて無理ですよ!!

蜂の巣をつついたような大騒ぎになったが、
なんとか英語でもコミュニケーションをとれるお宅をチョイスしたのでと伝えると渋々ながらも皆は了解してくれた。

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