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誰にも言えない、紗也香先生
第2章 3回目のレッスン
シャワーの音が、静かに心を包む。
湯けむりの向こうで、私の記憶がそっと息をする。
…雄くん。
あの声、あの眼差し、触れられたぬくもりが
肌の上に、まだ残っている気がした。

バスタオルを体に巻き、
少し冷えた足音を忍ばせながら部屋へ戻る。
ベッドの端にそっと置かれた、あの紙袋。
それを開く指先が震えた。

黒いレースのガーターストッキング、
緋色のリボンが秘められた下着、
背筋をなぞるようなドレス、
そして、ピンヒール。

ひとつ、またひとつと身につけるたびに、
鏡の中の私が、知らない誰かに変わっていく。
恥ずかしいはずなのに、どこか抗えない高鳴り――

「行くしかない、ね……」

リザの低く囁く声がまだ耳に残っていた。
写真――あのメール――
でも、それだけじゃない。
何かに引き寄せられている。
それが、何かまだ私にはわからない。

夜が深まるほどに、
私は毛布にくるまりながら、
甘い息をひとつ、またひとつ漏らしていく。

静かに、でも確かに、
胸の奥に灯った火が、消えることはなかった。
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