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誰にも言えない、紗也香先生
第3章 謎の女、ファンタシーの扉
誰もいない静寂の中、私は女子トイレの個室に足を踏み入れた。

そこには、予告通りの贈り物――革製の手錠と、小さな保冷袋。
(ほんとに……ある)
喉の奥がきゅっと鳴った。

震える手で、革の手錠を後ろに回し、不器用にカチリと締める。
残された自由は、唇と舌だけ。
私は、コートの裾を口で咥えてめくり上げ、恥じらいをぐっと飲み込んだ。

鼓動が速くなる。喉が渇く。
こんな格好で戻るなんて、想像もしなかった。
それでも、私は3階のアパートまで、足早に歩きはじめた。

コートの下、肌が風に撫でられるたびに、震える。
アパートの前に立ち、片足を内股にすり寄せる。
鍵はチョーカーのリングに繋がれていて、口でしか使えない。
くちびるで掴み、鍵穴に挿す――
(早く……誰か来ちゃう……)
震える指の代わりに、唇と歯と、時々舌で鍵を回す。
なかなか開かず、焦りが全身を包んだ。

ようやく、カチャリと鍵が開いた瞬間、私はすぐに家に飛び込んだ。

ドアを閉め、背をもたれたまま座り込む。
頬に流れる汗が、なぜか熱くて気持ちよかった。
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