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誰にも言えない、紗也香先生
第2章 3回目のレッスン

「こっちよ」
おばちゃんに手を引かれ、私は薄暗い店内に足を踏み入れた。
黄昏のような電球の下、
木製の椅子がぽつんと置かれている。
その場違いな静けさが、なぜか少し胸を高鳴らせた。
「これね、英語の説明書がどうしても読めなくて……」
黒い革の、長い手袋。
“Arm binder”――
腕を後ろに束ねる、特殊な拘束具だと説明書にあった。
「ちょっと着けさせてもらっていい?やり方を確かめたいの」
そう言って、おばちゃんは私の手を、後ろへ、そっと導いた。
くすぐったいような、奇妙な緊張。
肩の動きが制限され、革が肌に密着していく。
最後に、錠前が“カチリ”と音を立てた瞬間――
私の腕は、完全に封じられた。
「……あら、ちゃんとできてる!」
「すごい、先生のおかげで分かったわ」
二人で顔を見合わせて、なぜだか笑ってしまった。
それはちょっと恥ずかしくて、でも、あたたかい笑い。
けれど――
「……あら? 鍵が、ない……かも」
おばちゃんが眉を寄せる。
どうやら、送り返された時に、鍵を入れ忘れたようだ。
持ち主に連絡したけど、遠方らしく、いつ来られるか分からない。
「このままじゃ、ちょっとアレだから……2階で待ってて。店にお客さん来るかもしれないし」
私も真っ赤な顔で頷いた。
腕を背に束ねられたまま、まるで秘密を背負うように、階段を上がる。
雄くんの部屋は、小さなワンルーム。
いつ来ても整っていて、静かで、落ち着く空間だった。
窓際の布団、低くてしっかりしたローテーブル。
一人暮らしの空気は、私をなんだか不思議な気持ちにさせる。
――なのに今日は、手が使えない。
それが少し、非日常で。
おばちゃんに手を引かれ、私は薄暗い店内に足を踏み入れた。
黄昏のような電球の下、
木製の椅子がぽつんと置かれている。
その場違いな静けさが、なぜか少し胸を高鳴らせた。
「これね、英語の説明書がどうしても読めなくて……」
黒い革の、長い手袋。
“Arm binder”――
腕を後ろに束ねる、特殊な拘束具だと説明書にあった。
「ちょっと着けさせてもらっていい?やり方を確かめたいの」
そう言って、おばちゃんは私の手を、後ろへ、そっと導いた。
くすぐったいような、奇妙な緊張。
肩の動きが制限され、革が肌に密着していく。
最後に、錠前が“カチリ”と音を立てた瞬間――
私の腕は、完全に封じられた。
「……あら、ちゃんとできてる!」
「すごい、先生のおかげで分かったわ」
二人で顔を見合わせて、なぜだか笑ってしまった。
それはちょっと恥ずかしくて、でも、あたたかい笑い。
けれど――
「……あら? 鍵が、ない……かも」
おばちゃんが眉を寄せる。
どうやら、送り返された時に、鍵を入れ忘れたようだ。
持ち主に連絡したけど、遠方らしく、いつ来られるか分からない。
「このままじゃ、ちょっとアレだから……2階で待ってて。店にお客さん来るかもしれないし」
私も真っ赤な顔で頷いた。
腕を背に束ねられたまま、まるで秘密を背負うように、階段を上がる。
雄くんの部屋は、小さなワンルーム。
いつ来ても整っていて、静かで、落ち着く空間だった。
窓際の布団、低くてしっかりしたローテーブル。
一人暮らしの空気は、私をなんだか不思議な気持ちにさせる。
――なのに今日は、手が使えない。
それが少し、非日常で。

