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誰にも言えない、紗也香先生
第5章 川沿いのキャンディゲーム
朝、リザから短いメールが届いた。
「例の鍵を持って、放課後、駅のロッカーへ――中のものを、取って」
指先が一瞬震えた。あの夜の記憶が、氷のように冷たく、けれど甘くよみがえる。
跪いた私、氷から取り出した小さな鍵、背後で縛られていた柔らかな痛み。

放課後、指示された小さな駅で、私は静かにロッカーを開けた。
中にあったのは、ひとつのシェービングフォームと、光沢のあるカミソリ。
それをそっとバッグにしまい、何もなかった顔で電車に乗った。

夕暮れ、お風呂場の床にしゃがみこみ、ミントの香りが湯気と混ざる。
泡が肌を撫でるたび、不思議な冷たさが神経に広がって、
知らない私が、そこにいた。

鏡に映る自分の奥、
草が払われるようにして、ひとつの濡れた花が、そっと姿をあらわす。
はにかむようなそれに、私は戸惑いながら、カメラを向けた。

数分後、リザから届いた返信は――
「とても綺麗。明日、ご褒美を用意してあるわ。」
それだけで、心臓がひとつ跳ねた。
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