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誰にも言えない、紗也香先生
第5章 川沿いのキャンディゲーム
土曜の午後。
白いカーテンがゆれる小さな部屋で、
私は勇くんに英語を教えていた。

いつもより少し真剣な声。
けれど、その視線が私の指にふれたとき、
空気はふっと甘く変わる。

…私の中の、ツルツルの花――
それは、まだ彼には内緒にしていたい。
だから、今日もキスだけ。
長くて、柔らかくて、優しい、ふたりだけの約束のキス。

「これ以上は、だめ…よ」
そう言いながら、名残惜しそうに、彼の指をほどいた。



一階に降りると、おばちゃんが嬉しそうに言った。
「前にね、先生に来てもらってから、お客さん増えてね。
今度ね、新商品のモデル…バイトなんだけど、どうかしら?」

「えっと……考えておきますね」

笑って答えながら、心の奥は少しだけ高鳴っていた。
もし顔ばれしなければ――
そんなスリルも、悪くないかもって。

あの子には見せない、もうひとつの私。
誰にも知られていない、小さな冒険。
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