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誰にも言えない回顧録
第1章 32歳 専業主婦
やがて
お別れの時がやってきた。

と言っても義叔父一家にとってはただ「またね」という何気ない解散に過ぎない。
私だけが事実上こうした集まりに顔を出さなくなるだろうという予感があるだけだ。

適当にどこかでおばあちゃんと昼食に出かけてそれから帰路につこう、という義父の意向で我々はもう少し居残る形で義叔父一家を見送ることになった。

じゃあね
素っ気ない挨拶を交わしただけ。
でもそれで充分だった。


その後私は社会人となった。
仕事で知り合った男性と結婚し、今では二児の母となっている。
家庭は円満だし、夫婦の営みもそれなりにあって何の不満もない。

だけれど。
あの時の興奮と快感を上回る体験はこれから先まず訪れないと思っている。

案の定、今となっては義実家へ顔を出すきっかけも理由もなくなってしまった。
義父や妹を通じてうっすら義叔父の消息に触れる機会はあるけれど、ただそれを聞くだけのこと。

叶うことなら聞いてみたいな、とは思う。
あの時のことを思い出したりしますか、と。

【第1章 完】
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