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誰にも言えない回顧録
第1章 32歳 専業主婦
我に返った彼が自らの露骨な凝視に気付き、視線を切るそぶりを見せるまでほんの数秒。
だがそれはとてつもなく長い時間のことのように思えた。
大人の男が自分の肉体に見惚れている。
それはなんとも言えない優越感を私の心にもたらした。
その間全身を彼の目の前にさらし続けたまま、いわば視姦される状況に身を任せてしまったのだった。

うろたえながら「ごめん」とつぶやいたくせに彼の視線はまた私の身体に絡みつこうとする。
私もそこで初めて気恥ずかしさを覚えた。
「いいもの見たでしょー」などとおどけてみせ、肌を隠すなり彼を追い出して扉を閉めた。

彼はどう思っていたことだろう。
だがその後、互いにその出来事に触れる会話は一切なかった。

泊まる予定にしていた私たち以外の顔ぶれは皆近隣在住。
団らんの時間が終わり三々五々帰っていく。

その夜。
就寝前にトイレに入り、パジャマとパンティを一気にずり下ろして便座に座り込んだ私は、眼下の光景に驚いた。
無造作な脱ぎ下ろしで裏側が露わになったパンティのクロッチ部分がべっとりと濡れていたのだった。

まだその頃の私は自身の性についてさほど意識がなかった。
可愛いパンティが買い与えられれば喜びはしたが、排尿を済ませた後にしっかりしずくを拭き取るというようなこともせず、そのままたくし上げて無造作に穿いてしまう。
そのため、着用していくうちにクロッチには決まって細長い、濃黄色をした尿跡がついてしまっていたものだ。
むろんその際の股間の濡れ感などにも無頓着だった。

だがその時は、入浴後に排尿した記憶もなかった。
にも拘わらず、染み付いている尿跡の範囲を大きく越えて粘液の濡れが広がっている。
中心部のあたりはうっすら白く濁っていて、しかもまだ乾いてもいない。

トイレの柔らかな照明の中で照り光るそこに私は指を延ばせる。
人差し指の先でほんの少しすくい取り、鼻先に近づけた。
これまで意識したことがないような匂い。

自分の肉体から分泌したものとは思えない。
反射的に、私は便座に腰かけてだらしなく開いていた腿の間に深く手首を差し込んだ。
さらに指を折り曲げ、クロッチに密着していたと思われるあたりに指先で触れていった。

着地した途端、分泌のぬめりに指先が滑った。
その瞬間、私の腿がびくっと震えた。
私が初めて意識した「快感」だった。





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