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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第14章 人界の様子

「──…散れ!村人ども!」
「……?」
その時、蔵の外から馬のひずめの音が近づいた。
土を蹴る重い音が響き、村人たちがざわめく。
すぐに、すだれが乱暴に押し開けられ、鎧をまとった侍が入ってきた。男は刀の柄に手をかけ、鋭い目で巫女を捉える。
「先ほどの怪しい光は、そのほうの仕業か? 村の外からも見えていたぞ。モノノ怪か?」
それを聞いた村人たちが慌てて巫女を庇う。
「この方は村の子どもを救ってくれたんだべ! モノノ怪なんかじゃない!」
「救っただと……!?奇妙な真似を。おい、そのほう」
「はい」
「動じぬか……ますます怪しいヤツめ」
侍は巫女をじろりと見つめる。
しばらく彼女を睨んでいたが、その美しい容姿に気付いた後、口元に笑みを浮かべた。
彼は刀を抜き、刃の先で巫女の顎を持ち上げた。
「人かモノノ怪かは知らんが……美しい女だ。領主さまへの良い土産になる」
それを聞いた巫女は、抱いていた子をそっと布団に寝かせ、毅然と立ち上がった。
麻の衣がわずかに揺れる。
「わたしを連れていくなら、お好きになさいませ」
その声には、恐怖も屈服もない。
侍の笑みが深まり、村人たちは息を呑んで見守るばかりだった。
──…

