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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第16章 鬼の葛藤

(俺のものにならないなら……!)
苛立ちと執着
その葛藤が頂点に達した瞬間
────ポチャン
ひとつの水音が、鬼の脳裏を満たした。
冷たく鮮明な音が、彼の思考を切り裂く。
「……!」
助け て
微かな声が、鏡の奥から響く。
鬼は迷いなく天哭ノ鏡に向き直り、考えるより先に片腕を突っ込んでいた。
腕は水面のような鏡の表面に吸い込まれ、大きく波紋が広がる。
「……っ」
次の瞬間に鬼が手を引くと
水に濡れた巫女が彼の手に掴まれ、鏡の中から現れた。
──冷たい水滴が白い肌を滑り落ちる。長い黒髪が濡れて肩に張り付き、弱りきった身体は震え、目は固く閉じられていた。

