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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第20章 呪いの侵食

「鬼王さま」
鬼の影から現れた式鬼(シキ)が、背後から静かに声をかけた。
「どうした」
「呪いの出処が森にありました。やはりさらった人間の女を境界へ幽閉し、モノノ怪に喰らわせていたようです」
式鬼は恭しく頭を下げ、報告を続ける。
鬼は呪いの相手をしながら、式鬼の話を聞いた。黒い鎖がさらに締め上げ、呪われたモノノ怪が地面に叩きつけられる。
「その境界から、呪われた奴らが解放されたというわけか」
「はい。これを謀った首謀者ですが…」
「いい、予想はつく」
式鬼の言葉を遮った鬼王の視線が、花街の妓楼(ギロウ)の屋根に向けられた。
「──…主犯はお前だな、大蛇(オロチ)」
「……フッ」
屋根に座る青白い顔の青年が、口の端を歪めて笑う。
青年の目は蛇と同じく細く、白髪が生ぬるい風に揺れていた。

